映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

春原政久監督「三等重役」271本目

1952年作品。

会社映画ですが、社長を演じるのは河村黎吉という役者さん。この映画が遺作だそうです。森繁久彌はまだ人事課長です。

人気小説の映画化だそうですが、かなり面白かった。エピソードのひとつひとつが、現実にはここまではやらないだろう!という、ちょっとだけ超えた感じがあって、小さい驚きがずっと最後まで続きます。この映画おすすめです。

前社長が戻ってくることになったときの社長や役員会の狼狽っぷりがおかしい。
社長の娘がやってる美容室に社員の妻たちが通っていて(不思議な形のパーマ装置を使ってる)、ボーナスの額を夫がごまかすとみんなで愚痴っていると、社長の妻がやってくる。みんなで社長の奥さんになんとかしてくださいと頼んだところ、つぎのボーナスは社長から直接社員の妻に渡すことに決まったと通達が出ます。妻たちは大喜び、夫たちは不満顔。・・・しかし、森繁演じるタヌキ課長は「うっかり、特別賞与の分をお渡しするのを忘れておりました」。社長は「それは大変な大失態であるな」とニヤリ。

「給仕、お茶!」というと、学生服の青年が「はいっ!」と立ちあがります。バイトの男の子がこの頃はお茶入れをやってたんですかね。

ひょんなことから、取引先社長のお妾さんと同室に泊まるはめになってしまったこちらの社長が、翌朝「米櫃の前で断食しているような気持ちだった」というのがまた笑える。なかなかよく練ったコメディだなぁ。

この頃の「社員の妻」の世界って面白いですね。妻が働いてるかも、なんてことは想定されてないし。

機会があればぜひ見てみてください。