映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒澤明監督「羅生門」388本目

1950年作品。

この映画見るの、何回目だろう。
評価が難しいですね。
実験的、意欲的な作品ではあるけど、“名作”なのかどうか。
黒澤明×三船敏郎の、濃すぎて暑苦しすぎる画面。役者さんの演技はすべてtoo muchだし、四社四様の証言はだいたい同じようにも聞こえるし、全然違うようにも聞こえる。結末が教訓的なようでもあり、でもやっぱり全体のテーマは「すべては薮の中」のようでもある。

外国人が見ると、私たちがフランス映画に自分たちと違うものを感じるのと同様、エキゾチックな魅力を感じるのでしょう。

役者さんはみなさん素晴らしいです。最高なのは京マチ子の、女らしく、激しく、かつしたたかな演技。このときまだ26歳であどけなくて、子猫のように人の心をとりこにする感じがあります。森雅之の端正で知的で、すこし冷たい魅力も良く出ています。三船敏郎もまだ若くて、汗と脂が飛び散るような激しさだけでなく、無邪気な若々しさもあります。やけに弱気な千秋実の僧侶、正直だけどおどおどしている通りすがりの志村喬、調子がいいけど根が悪い上田吉二郎。

後世に大きな影響を与えた実験作としての評価は5.0なのかもしれませんが、今この映画を見たただの一般人としては、正直なところもう少し低い点かな…。