映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・タチ監督「プレイタイム」460本目

3本目にして、やっとタチの映画の楽しみ方がわかってきました。
がんばらずに、お酒飲みながらご飯食べながら、ぼーっと見ればいいんだ。
ユロ氏とかタチとかが出てくるかも、って探したりしないほうがいいんだ。
起承転結とか、過去とか未来とか考えずに、駅のホームとかデパートの休憩所とかのベンチに座って、人の流れを眺めてるみたいに見る映画なのでした。

他の映画と同様、この映画にも最新のキラキラのビル群や、電化製品の展示会がでてきます。タチってこういうの好きなんだな。家電芸人的に、新しいものが好きなんだろうな。そして最新のファッションを身にまとった美しい女性たちが華麗に行き交います。それとの対比でユロ氏の不器用っぷりが際立つから、という理由かもしれないけど。

相変わらずストーリーもオチもなく、説明するとどうやらアメリカからのツアーがパリに来て帰っていくのにユロ氏がちょこちょこからむ映画だったんだな、ということになります。

でも…純粋に自分の美学を貫き通すために膨大なお金と時間と手間をかけても、わかりにくいものができあがると、「もともと監督と同じ感覚を持っている人や、もともとそういう映画を特別に求めていた人」以外に訴えかけないのは当然で…。多分今ならこの人はCMやビデオクリップの監督になって、ヴォーグとかイブサンローランとかグッチとかと組むといいんじゃないだろうか。“よくわからないけどなんとなく素敵”っていう感覚だけを届ければいい、そういう場にいるほうが幸せな人なんじゃないかな…。と思いました。