映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

バルタザール・コルマウクル 監督「湿地」2703本目

<ネタバレというかネタ推測あり>

北欧ホラー、しかもアイスランド。レイキャビクは島の中では南西にあって比較的温暖で明るい街だったけど、この映画を見ると、アキ・カウリスマキの映画の中のル・アーブルみたいに陰鬱だ。しかも悪趣味。遺体から取り出した内臓、家の地下から掘り出した腐敗遺体、そのすぐ後にファーストフードをほおばる医師。

その一方で、いかつい警官たちの合唱隊の声はまるで天使みたいに美しい。映画でも映ってたハットルグリムス教会でこんな歌声を聞いたということは、アイスランドはきっと合唱が盛んな国なんだろう。

遺伝性の脳疾患で、若くして亡くなるのは女性だけみたいだ。男性は保因者として命をつなぐだけ。母がレイプで授かった自分という命に意味を見出せなくなってしまった。

これほど確実に妊娠させたのが3人組のレイピストのうち1人だけ、という設定は無理があるので、単独犯行でも良かったんじゃないかな。男女不明の難しい名前の登場人物が多すぎて…。

独特の味わいのある作品だけど、原作がきわめて高評価なのに比べると、映画は地味な気もします。さっそく原作も読んでみることにします!

湿地 [DVD]

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  • 発売日: 2017/11/02
  • メディア: DVD