映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピエル・パオロ・パゾリーニ 監督「奇跡の丘」3148本目

これもパゾリーニ監督。こっちを先に見たほうがよかったかな。1964年の作品で、まだモノクロ。

「アポロンの地獄」よりずっと入りやすい映画です、なぜなら主役がジーザスだから。ざっくりとしたストーリーはわかっているし、ベースが聖典だから、立体になってること自体が奇跡のように、字幕で見るテキストも素直に入ってきます。マリア役の女性、若くて清純で真摯でぴったりだなぁ。ジーザスは、眉がつながった細面で少しアジアが混じった感じの容貌。私たちは十字架にかけられた彼のイメージを強く持っているので、繊細な人だと思っているけど、この映画の中では森に潜むパルチザンの頭領みたいで、固い意志や強い闘志を感じさせます。これは監督独自の解釈なのかな。

どこかの国では左右の眉がつながった女の子は頑固すぎて苦労するから、小さい頃から眉間の毛を抜いてだんだん生えないようにするとか。この作品のジーザスは頑固さを強調するために、あえて眉間に描き足してるのかも。

この映画は面白かったな。知っているストーリーを、こういうキャストでこう表現するのか、という面で。イエスの他に二人の弟子も一緒に十字架にかかったんだっけ??と思って調べたら、他は別の罪を犯した人たちでした。

ドラマとして見ると実に悲壮で感動的です。”原作の良さ”、忠実な演出と自然なキャストがこの作品のポイントかなと思います。不倫と信仰の矛盾について昔インタビューされた女優が「神に頼らなければならないのが人間ではないでしょうか」と答えたように(変な例ですみません)、監督はこのあと神に違背するような作品にどんどん突っ走っていくけれど、そんな自分をどうにもできずに神のことを思い続けた人だったのかもな、と思いました。

奇跡の丘 (字幕版)

奇跡の丘 (字幕版)

  • エンリケ・イラゾクイ
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