映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

佐藤祐市 監督「キサラギ」3652本目

阿津川辰巳の作品集「透明人間は密室に潜む」の中にアイドル関連の事件を裁判員たちが審判するという短編があって、その流れでこの作品の名前が目につきました。2007年の作品。文化的には大きく変わってない気がするけど、まだスマホじゃなくてケータイの時代だしウェブサイトのデザインはシンプル。対して違わない気がするのに、妙に古臭く感じるのはなぜだろう。

小栗旬が一番変わったな・・・まだ細っこくて大河主役感がない。彼も小出恵介もユースケ・サンタマリアも、ばらけた筆みたいな髪型。全員が、亡くなったアイドルのファンで、これは追悼のための集まり。っていうアイデア、なかなかいいですよね。だからか、けっこう昔の地味な作品だけど感想書いてる人が多いし点数も高い。期待が高まります。・・・

・・・見終わりました。可愛くておっちょこちょいの一人の女の子を愛して、守ろうとした老若さまざまな「ファン」たち。Max5人かよ、というマイナーなアイドルだけど、そこにはささやかな心の交流があったのね・・・というこの爽やかな終わり方。1980年代のアニメのようじゃないですか。アイデア一発勝負の比較的低予算な作品だと思うけど、たくさんある伏線を丁寧にたぐりよせてくれたし、よくできた脚本だなーと思います。

しかしこの脚本家古沢良太、こういう”玄人受け”しそうな、KINENOTE平均評点77超えの作品ってこれくらいみたいなのが惜しい。この先また野心的な、挑戦的な作品も書いてほしいなぁ。

(ちなみに宍戸錠は結局なんなの?もしかして”蛇の足”のようにも思える・・・)