映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピエール・エテックス監督「恋する男(旧題:女はコワイです)」3725本目

この監督の「ヨーヨー」を先に見たんだけど、パリのしゃれっ気あふれる素敵な作品でした。可愛くて可笑しくて優しくて。この作品も、成長した少年がまだうまく大人の男になりきれず、失敗ばかりするのが愉快です。

とにかく、世界中の女子が憧れる華麗なパリの夜の社交の世界が、これでもかというほど映画全体にわたって繰り広げられます。監督自身の見事なジャグリングを含むサーカスの場面も素敵。ちょっと切ない、幼い頃の憧れが詰まった作品ですね。日本で1963年にこの映画を見た人たちも、この華麗さやどこか郷愁をさそうおかしみに夢中になったんじゃないか?

この監督の作品をふたたび世に出そうと、フランス屈指の映画監督たちが動いたのも、わかる。小さい頃にこの映画を見たりしたら、一生心に残って、ときどき見直したくなると思う。ストーリーもいいんだけど、音を消して別の好きな音楽でも流しながら、彼が歌手にみとれてコーヒーやトーストをめちゃくちゃにする場面とか延々と見ていたい。

一連のフランスの可愛くておしゃれな映画に連なる作品だけど、ファッションを中心にした映画としても見たくなる。(私は自分ではユニクロとか着てるくせに、ファッションデザイナーのドキュメンタリーを見るのもめちゃくちゃ好きなのだ)

うん。いいもの見せていただきました。