映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

藤田敏八監督「妹」3197本目

<結末にふれています>

姉が「かぐや姫」のLPレコードを持っていて、「妹」や「赤ちょうちん」をベースに、秋吉久美子を主役にして作られた映画があることは当時から知ってたけど、まぁ子どもの見るものじゃないですねこれは~。少女みたいにあどけない秋吉久美子が、兄の前で何の気なしに見せる風呂上りの姿とか…。その後の二次元のオトナ向け妹コンテンツの走りだったといえるかもしれません。歌はかなり清純派で、両親を亡くして二人だけで暮らす真面目な兄妹が、明日結婚して家を出る妹に「あの味噌汁の作り方」を書いていけという内容(歌詞まで覚えてる)。一方この映画では、兄は海岸のトイレで若い女性を強姦するし、妹は同棲していた男を突き落としたと告白するし…喜多条忠(「妹」の作詞家)の世界と相当違う、藤田敏八のバイオレントな世界が広がっています。どちらも当時の世相を映していて、とても面白いのですが。

サイトのほうに新宿住友三角ビルが登場しますが、この映画が撮られた1974年にはもうあったんですね。京王プラザホテルの次くらいに建ったのかな…。きっと新築の、当時一番クールなスポットだったんだろうな。

妹、秋吉久美子は相手すら特定してもらえないまま誰かに嫁いで、その後、出家したのか坊主と出奔したのか、という感じで消えて、兄は屋台をやりながら妹の行方を探します。

ちなみに、わりとやらしい映画なのですが、兄と妹の禁断の場面はギリギリ兄が我慢して終わります。映倫…

それにしても、当時はおそらく通行人に同意なんて取らないで勝手に録ってたんだろうな…すれ違った人がみんなカメラを振り返るのが、なんか面白かったです。

ひし美ゆり子がめちゃくちゃキレイなのと、海岸にいる画面で、岡本太郎デザインっぽい飛行船が飛んでいくのが印象的でした。

妹

  • 秋吉久美子
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