映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

五社英雄監督「極道の妻たち」86

1986年作品。このブログではもはや「むかしの日本映画」と分類している作品です。

感想。B級中のB級だった…精気を抜かれるほど。ブログで感想を書いた作品では「女囚さそり」に匹敵するB級度だなぁと思いました。匹敵もするし似てもいます。女性どうしの取っ組み合いのケンカ(キャットファイトっていうんですね)や、当然のように行われる強姦。男どうしは銃や日本刀による殺し合いでドカドカ死んでいきます。血をたくさん流して、オーバーリアクションであおむけに倒れて、口を開けて。

女たちはとにかく胸をあらわにして乱れる。戦争反対とかポルノはいかんとかみんな言うし、私もつねに反対してるけど(戦争には。ポルノはべつに)、ふつうの人間のなかにそういうものへの本質的な欲望がそうとう強くあるのでなければ、この2つの映画がシリーズ化することはない、とも思う。俗悪とか残酷とかっていうものは一部の人間の中にあるんじゃなくて、どの人間の中にも一部にあるのだろう。

「さそり」では梶芽衣子のクールな美しさが輝いていましたが、「極妻」での岩下志麻とかたせ梨乃も美しいです。どんなキャットファイトをやらされても、上品。

かたせ梨乃の清純な女性像はわりあいイメージとしてはありふれていたかもしれないけど、岩下志麻はこの映画で初めて、かつ突然、日本の悪女の新しい像を確立したのではないでしょうか。本当に大物で本当に美しくて本当に残酷。なにがあってもキャラが崩れない。演じている岩下志麻の大真面目さがこのキャラの強烈さを1.5倍くらいに増強しています。

口をぽかんと開けて見入ってしまうような魅力が、こういう映画にはあります。…怖いもの見たさっていうのでしょうか。たくさん見るのは辛そうだけど、ヒットシリーズ第一作に見られる、ビッグバンのような荒削りなエネルギーが大盛りにあふれた作品でした。あんまり凄くてなんか悪く言う気になれない。

そうそう、世良正則がかたせ梨乃とからむヤクザとして出てるのですが、今やってる朝ドラ(梅ちゃん先生)での赤ひげ的な町医者役と比べて、30年近くも前の姿だと思えない…デビューした頃から、若々しいのにおじさんっぽかったもんな…。

以上。