映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

若松節朗 監督「沈まぬ太陽」931本目

4時間近い大作だけど、「2時間ドラマ2部作」という感じで、冗長さはありません。
半沢直樹」とジャンルは同じだけど、もう少し現実に近い、と思いました。
日本航空の中で、この映画と完全に同じことが起こったわけではないと思うけど、会社、とくに良くも悪くも家族的で私情を持ち込みやすい東アジアの会社の中には、このようなことが行われているところもたくさんあるんだと思います。

会社で「干される」というのは、名誉を重んじる日本では特に辛いことなんだと思うけど、映画の舞台がアメリカだったら、もしかしたら主人公はTシャツ短パンで毎日出社して、釣りでもして過ごすかもしれない。転職してしまってもいい。
“屈辱”に“耐え”ながら、それなりの高給をもらいつつ仕事らしい仕事をしない、というのは、経費としては無駄金だし、“屈辱”のようなコストに換算できないものを懲罰として与え続けることは、経済学的には意味がない、というような話になりそう。

それでも、弱者が下克上することを「勧善懲悪」と呼んで礼賛する「半沢直樹」よりいいです。
強者になった元弱者が、元強者を平気でいじめるところなんて、見たくないです。みんなが幸せになることより、恨みを晴らして誰かを不幸にすることのほうが大切になっちゃってるみたいで。