映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

藤岡利充 監督「映画「立候補」」959本目

すごくインディーズ感が強くて、「ゆきゆきて神軍」みたいなドキュメンタリー映画
マック赤坂羽柴誠三秀吉など、いわゆる”泡沫候補”として数々の選挙戦に出馬を続けてきた人たちに密着取材した映画です。

素顔の彼らは共通して真面目なんだけど、政治や政治家、警察といった公権力を心の底で見下していて、政治ではなくある種の選挙戦のプロになってしまっているようでもあります。共通点としては自己顕示欲もあるでしょうし、政治を行うこと・続けていくこと、人を説得することに対する意外なほどの無関心も感じられます。自分を見てもらうこと以上に、人の話を聞かない限り政治は行えないはずなのに(だって自分の話を聞いてほしいのは彼らだけじゃなくて、誰だって同じだから)。

それでも彼らの真剣さは、あまりにも政治に無関心(に見える)一般の人たちに一石を投じたいという思いから来ているんだろうと思います。彼らが気づけないのは、黙って自分たちに目もくれずに歩く人たちが、本当はそれぞれの事情を抱えて、いろんなことを考えていること。彼らはあまり他人に深く関心が持てないのかな、という気がします。

うーん、これってこの人たちだけじゃないなぁ。日本人みんなそうだとは思わないけど、オレオレな人たちってけっこういるよね…。でも、いちおう平等に立候補している人たちに向かって「泡沫候補」って言うのはちょっと失礼だなぁとは思います。

この先もいろんな候補者が出てくるだろうけど、できればもっと「今までにない」いろいろな人たちが出てきて、もっともっと選挙が「面白く」なるといいなと思います。