映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イヌーク・シリス・ホーフ 監督「サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け」3202本目

面白い…なんて面白いんでしょう。1970年代にグリーンランドで初めて現地語でロックのレコードを出した「スミ」というバンドがあった。メンバーにも、ファンや関係者として発言する人たちにも、明らかにモンゴロイド系が多い。スカンジナビア半島やアイスランドには全然こんなにいないと思う、少なくともメジャーシーンには。デビューアルバムのジャケットには、入植者を殺すイヌイット(というより雪男に見える)のイラスト。彼らはデビュー直後から絶大な人気を得て、グリーンランド独立にも寄与したという。(アイルランドのマイアミ・ショーバンドは、そういうのを見た当局の標的になったのかな)

その後政治家になったメンバーの一人が脱退を切り出したのをきっかけに、わずか3枚のアルバムを残してバンドは解散するんだけど、サウンドがとても良いですね。複雑なハーモニーや変拍子もあるけどメロディは抒情的で、政治的メッセージの強いメンバーのがっしりとしたボーカルでインパクトもあります。本当に面白い。

この映画の制作は2014年だけど、ピーター・バラカンがつい数か月前に自分のイベントでこの映画を取り上げたらしいですね。音楽ドキュメンタリーとしての出来もいいし、ワールドミュージック(って今いわないのかな)好きの人間には、グリーンランドの国民的バンドなんて聞いただけでむずむずしてきます。

これは本当に見てよかった!