映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「ヒミズ」128本目

2012年1月公開。

人情も血も涙もない、ひどい世界。
金を盗んだり男と逃げたり、まぁひどい人間たちとその子どもたちが、骨組みだけが残ってあとは腐り落ちたような世界で暮らしています。

そうか、そうやって心が死んでいくんだな。
と、懐かしいような気持ちに一瞬なりました。
いじめとか傷ついたこととか、思春期には感受性がピリピリしていて、この映画のような気持ちになったことがあったことを、ずっと忘れてました。
さらけ出すと楽になるのかもしれません。
・・・おっと一瞬、中二状態になってしまった。

これって震災をとりいれたことを除けば、マンガが原作なんですね。
最近のマンガはすさんでます。
でもそれが今の世の中で、今を映した作品がうけるってことでしょう。

主人公の二人、染谷将太二階堂ふみが、同じくらい素晴らしいです。
紛争地域でライフルを持たされて戦地に生かされてる子どもみたいなリアルな表情。
ちなみに英語字幕の英語もとても良い。これなら字幕で見た人にも空気が伝わりそう。

最後の「スミダ、がんばれーー」で大泣きしてしまった。
事情はいろいろだけど、絶望をもったまま生きていかなきゃいけない人って本当にたくさんいる。100万人とか1000万人とか1億人とかいると思う。いいことなんか、これからもないかもしれないけど、がんばるしかない、っていう考え方に共感します。
なんか、ハッピーエンドにはならないけど、“でも赦されている”というようなこの感覚、教会にたどりついて息絶える的フランダースの犬的な、大いにキリスト教的な昇華感ですね。

やっぱこの監督あなどれない、とふたたび実感した作品でした。テーマが非常に大きい。歴史に残っちゃってください。以上。