映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アルフレッド・ヒッチコック監督「巌窟の野獣」2319本目

原題は単に「Jamaica Inn」だけど、映画の中ではこの名前自体が怪しいものとされています。ぱっと見あっさりしてるけどねぇ。

トーキーになったばかりの時代で、画面が荒れているおかげで、荒くれ男たちが本当に荒く見えます。黒澤明の昔の映画みたいだな。

最初に訪ねた屋敷の「ペンガロン卿」はチャールズ・ロートンですね!ディズニーアニメの悪者はみんな彼を模倣してるんじゃないかというくらい、愛嬌のある悪役。「戦艦バウンティ号の叛乱」ではこの上なく悪辣な船長だったっけ・・・

ヒロインのモーリーン・オハラはこの荒い画面でも陶器のような肌がわかるとても美しい女優ですね。

「ジャマイカ・イン」の造形が有機的で、カリガリ博士を思い出すなーと思ったら、プロデューサーが同じエーリッヒ・ポマーですって。ヒッチコックと彼が組んだのはこの一作だけみたいです。

この作品はヒッチコックのイメージとは違うけど、よくできた海賊ドラマだったんじゃないでしょうか?大波、難破船、大勢の海賊・・・といった思い切ったロケも行っていて、見ごたえもありました。

巌窟の野獣 [DVD]

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