映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニー・ボイル監督「シャロウ・グレイブ」210本目

1995年公開作品。
この映画は見たことがあるのをはっきり覚えてるんだけど、ストーリーだけで、どういう印象だったか思いだせないので、見てみました。注目のダニー・ボイル監督特集です。(注:園子温新藤兼人ダニー・ボイル等に注目してて、全作品を見終わるまで集中して見てるってこと)

いまや国民的映画監督ダニーボイルの初監督作品、らしい。テレビ映画のような90分ていどの長さ、あまりお金がかかってなくて、カットとかにそれほど凝ってない感じ・・・と思ったら、ラストにChannel 4って出ていて、やっぱりロンドンのテレビ局が作ったものでした。

コロンボみたいな刑事に、なんだか観客もルームシェアの仲間のような気分になって追い詰められていきます。思い出した。これは“胃が痛くなって最後まで見るのがツライ映画”でした。

ストーリーはかなり黒いんだけど、ほっぺがふっくらした23歳の長髪のユワン・マグレガー小僧のしぶとさのおかげで、暗くならない。
思えば、このあとのトレインスポッティングザ・ビーチも、似たところがある。光の中で生きている若者たちが暗黒を見て、ずるっと引き込まれそうになるけど、なんとしてでも日向に居残ろうとする。

ユワン・マグレガーの役や、ザ・ビーチでのデカプリオの役は、ぜんぜん善人ではなくて、ズルくてワルい奴なんだけど、とにかく前向きで上向きで、お日様のほうを向いてとにかく生き延びようとする。

この映画の場合、若い人の映画にありがちな善悪の区別のゆるさのまま終わるので、分別のついた大人が見ると「ええ〜?」って思うかもしれません。

95年のロンドンは、14型ブラウン管のテレビ、ジリンジリンって鳴るダイヤル型の電話、ダイアナ妃ふうのショートヘア、薄暗い室内と色あせた布ソファ、等々いろいろ懐かしい。(←92年にちょっと長く滞在した思い出)

面白かったけど、カラっと終わるには人間関係が崩れすぎてしまいました。公開当時に見たら「いいけどこの監督の次回作が楽しみです」かなんか(評論家のように)言ってしまったかもなぁ、と思います。以上。