映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・タチ監督「ぼくの伯父さんの休日」453本目

あまりにも、そこはかとない笑いなので、ただ流して見て「?」となってしまいそうな映画。
ジャック・タチ演じる「ユロ氏(テニスおばさんはヒューロって呼ぶけど)」は、一見普通だけどびみょうにズレてて、何をやってもすこーしずつおかしくなって、何もできていない。(どかーんと失敗するオチもない)
童顔で、前髪がタンタンみたいなツンとたった、誰よりも背の高い大男で、なーんか動きが変。キョドってる。MrBeanのローワン・アトキンソンがファンだと言われて、なるほど。

音楽を使うとき、明確な意味を持たせてるのがおもしろい。基本BGMではなくて、誰かがレコードをかけている、という設定で音楽が流れます。それ以外は話し声や鳥の声といった「自然音」だけが流れます。ユロ氏は基本黙ってるので。その辺が、音楽のないサイレント映画みたいでちょっとキツいのかも。

繰り返し使われる”ムード音楽”ふうのサックス、ピアノ、ビブラフォン(で合ってますかね?)によるテーマ曲が流れている場面は、おだやかな幸せ。嫌なニュースがラジオから流れてきていたり、男たちが議論している場面で、誰かが(子どもやユロ氏)レコードプレーヤーやラジオのボリュームを上げる。

ユロ氏がやることは必ずうまくいかない(そしてオチがない)けど、ちっちゃい子がよちよち歩きで運ぶアイスクリームは、ちゃんともう一人の子どものもとに届く。ぜったい落とすと思いながら見ていたら裏切られます。

進歩主義はいけない、折衷主義でいくのがいいんだ」という言葉が数カ所で出てきます。
自動車もいいし馬もいい。という部分はたしかに折衷主義だけど、サイレント映画ふうの画面構成なのに鳥の声だけというのは、どこがポイントなのかわかりにくくて、見る人の負担を大きくしています。

ちなみに、一連の作品はポスターが大変オシャレです。ユロ氏のうっかりっぷりも愛嬌があって、きっと子どもに人気があったんじゃないかな〜友思います。