幅広いです、ワイズ監督。でもどの映画も、どこか観客をくすぐるエンタメ性があっていいですよね。
この作品も、今見るとハリボテ的なUFOや宇宙人なんだけど、衣服の表面が艶消しでつるんとしていたり、UFOへの入口が無音で布みたいにスーッと伸びてスーッと引っ込む感じとか、ディテールが「ちょっといい感じ」です。
地球人型宇宙人のクラトゥはまるで”アメリカの良心”ジェームズ・スチュアートのようにジェントル。こんなに英語が流暢なのに通貨のことがわからずに完璧なカットのダイヤモンドを差し出したりするあたり、デヴィッド・ボウイの「地球に落ちてきた男」を思い出してしまった(あっちは地球人型とはいえない)。
結局のところ、地球に彼らは警告をしにきてあっさり帰っちゃうんだけど、ロボットに蘇生されても「生死をつかさどるのはロボットではない、全能の神だ」とか地球的宗教観を覗かせたりするあたり、技術万能的な理系の人じゃなくて、文系というか人道派の人が書いた宇宙ものっぽいなぁ。
これはこれで、黎明期の宇宙人SFとして見ておくべき作品だと思いました。