映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2014-01-01から1年間の記事一覧

セルゲイ・パラジャーノフ「スラム砦の伝説」749本目

生けにえになるために生まれてくる子ども、生けにえを捧げるためにしつらえた広場と門。 最初は時間がランダムに流れているようだけど、徐々に1点に向って流れているのがわかってきます。この映画に出てくる人たちも、ほんとうに美しいです。そしてこの映画…

セルゲイ・パラジャーノフ「アシク・ケリブ」748本目

予想してたけど強烈な映画だった。 フリーダカーロみたいな、眉毛がつながったお姫様と、同じく眉毛がつながった英雄アシクケリブ。 それにしても、このグルジアの人たちの美しさといったら。 どういうふうに混血したらこの容貌が生まれるんだろう?明快なス…

ラッセ・ハルストレム 監督「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」747本目

デジタルリマスター万歳。 DVD化されたことのない過去の名作が、全部そうやってよみがえればいいのに。とっても温かく前向きな、不幸なこどものお話でした。タイトルだけずっと知ってて、没落貴族か薬物中毒患者のお話だろうくらいに思ってたので、かなりや…

フランク・ダラボン 監督「ショーシャンクの空に」746本目

映画を見始めた時期は、どれを見ても新鮮な感動があって、毎日楽しかったけど、最近は最後まで見る前に飽きてしまうことが増えてました。そんな中で久しぶりに、あらゆる面で本当にいい作品だったので嬉しい。主人公アンディの寡黙で冷静な個性がとてもおも…

前田司郎 監督「ジ、エクストリーム、スキヤキ」745本目

この映画なんとなく好き。 じんわりと来るいい映画なんだけど、なんともいえないマイナー感がただよっています。商業的な大ブレイクとか絶対なさそうな感じ。なんだろう、この懐かしいような感じ…と思ってみてみたら、横道世之介の脚本を書いた人なんだな。…

森崎東監督「ペコロスの母に会いに行く」744本目

何度もポロポロ泣きながら見たんだけど、その半分かそれ以上は、映画を見ることで、自分が今まで生きてきたことがよみがえってきたからで、そういう割合は年を重ねるほど多くなってくるもんだと思う。ボケることもいつか死ぬことも、年を取ってくるとだんだ…

ニコライ・ミューラーショーン 監督「レッド・バロン」743本目

いい映画でした。 戦場もの、しかも事実に基づくドキュメンタリー。でも、敵のエースの墓に戦闘機から花束を落とすというエピソードから始まることで、若くて端正なパイロットたちがロボットなどではなくて生身の若者たちだと感じられて、見る人は親しみを感…

山田洋次監督「息子」742本目

永瀬正敏のチンピラっぽさってほんとにいいな。 三國連太郎がさえないじいさんを演じてるのも、うまい! ろうあ役の和久井映見と結ばれて、本当によかったと見ている人たちは感情移入できると思う。最後に老父が岩手の家で暮らして行く孤独を苦く見せるのは…

ロバート・ロドリゲス監督「マチェーテ」741本目

スカッとするなぁ! 園子温「地獄でなぜ悪い」の兄弟映画?(こっちが兄)って感じです。 おバカで大味で大げさでペーソスもへったくれもなく、あるわけねーだろ!という、ほとんどギャグな暴力に次ぐ暴力。実にペースがいい。一瞬たりとも観客を退屈させま…

原田眞人 監督「わが母の記」740本目

見たかった映画だし、しずかに流れる自然な時間がよかったし、最後は自分の生きてきたことに想いを馳せてじんわりと泣けたんだけど、なぜか途中で何度も見るのを止めそうになった。うたた寝したり退屈してしまったり。樹木希林の演技はほんとに素晴らしい。…

神代辰巳 監督「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」739本目

BSでやる企画ものの2時間ドラマ、という感じのボリュームと存在感。他愛ないストーリーで、もしかしたら”よくない作品”なのかもしれないけど、原田美枝子、宇崎竜童、原田芳雄、この3人があまりにも魅力的で、リアリティのないふわふわとした少女と彼らとの…

山下敦弘 監督「もらとりあむタマ子」738本目

この子ほんと浜ちゃんに似てるなぁ。 前田敦子っておもしろいなと思って見てみました。ダラダラなタマ子の演技、味があります。が、彼女に限らず、この映画全体がどうも詰めがあまいかんじがします。あと10%、ダメだったらもっといいのに。お父さんの怒りの…

ノーマン・ジュイソン 監督「オンリー・ユー」737本目

うーむ。マリサ・トメイってきれいだけど演技が不自然。ロバートダウニーJrは個性がはっきりしてるけど… なんか、この主役の二人が仕事で出会って恋に落ちるための映画だろうかという感じでした。

レザ・ミルキャリミ 監督「花嫁と角砂糖」736本目

イランの映画なんて初めて見ます。わくわく。ある家の末娘が、隣の裕福な家の息子の嫁になるために外国に行くことになりました。 家じゅうの女たちはおおはしゃぎ。子ども達も着飾って、婿はいないけれど華やかな婚礼の準備が進みます。 幸せに満ちあふれて…

ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 監督「ノーカントリー」735本目

アクの強い映画だけど、見応えがあります。 ハビエル・バルデムの、どろっと濃い悪辣さ。冷酷なのにちっとも「クール」な感じじゃなくて、そこだけ温度が高く感じさせる、独特の悪役っぷりです。 欲張り、ヤマっ気、負けず嫌いというハリウッドで最も殺され…

ジャック・ドレー 監督「フリック・ストーリー」734本目

アラン・ドロンとジャンルイ・トランティニャン。ジャンルイの方がまさかの極悪人役。青いクールな目が「実は悪い男なんじゃないの?」と見えなくもないジャンルイ、非情な感じでよかったです。もはやロボットのよう。 アランドロンは、刑事役をやっても犯人…

ニンツァイ監督「我が大草原の母」733本目

2010年中国の作品。 広大な草原が、一人の心の大きな女性がいることで、温かい世界になる。 育てた子どもたちは数名だけど、その数名の心のなかに大きな感動を遺せるということは、世界中の人を感動させるのと同じようにすごいことだ。 草原のなかで、しっか…

ヴォルフガング・ベッカー 監督「グッバイ、レーニン」732本目

いい映画でした。 壁の崩壊前後の東ドイツの人たちの暮らしと想いが、母を思う息子を囲む人々によって普遍化された。 この映画が家でDVDで見られて、本当に嬉しい。 年明けに行ったベルリンでの経験が、こうやって追体験することですこし強くなる気がします…

大島渚監督「日本の夜と霧」731本目

1960年の作品。 自分が成長したのか退化したのかわからないけど。 若い頃は、若い人たちが青筋たててこういう議論をしてた時代ってカッコいいと思ってた気がするけど、今はあまりそう思わない。以前は、資本主義か社会主義かということは重要で、社会主義の…

スティーヴン・アンティン 監督「バーレスク」730本目

楽しかったぁ…。 なんか、主人公のアリとジャックの会話が、ある意味ありきたりで、次に相手が何と言うか私でも読めてしまう場面がとても多かったんだけど、印籠を出す時間が決まっているから水戸黄門が駄作だということはないわけで、この映画はとても良か…

福田雄一 監督「HK 変態仮面」729本目

いやー、本っ当にバカバカしくて感動する。清々しいくらいだ。 男性のパンツってこんなに伸びるのかなぁ。女性用のパンツは顔にかぶるとあんな形になるのかしら。おっと、実験はやめとこう。 この人、31歳で子持ちなんだ…、鈴木亮平。去年の映画だから、やっ…

ロマン・ポランスキー監督「おとなのけんか」728本目

アメリ・ノートンという人の「殺人者の健康法」という本を思い出しました。 ベルギー人女性が、日本に来て商社で1年間勤務したときのストレスを、帰国後にたっぷりと吐き出した小説。最初は友好的に振る舞っていた人たちが、話しているうちにどんどん激高し…

小林政広 監督「春との旅」727本目

祖父と孫娘が、引取先を探しまわるロードムービー。 こんなおじいちゃんと孫娘がいたら切ないだろうな、という空想で紡ぎ上げられたおとぎ話です。途中まではよかった。仲代達矢はもちろん、徳永えりがまだこの頃はだっさくて不器用な田舎の子そのものに見え…

小泉堯史 監督「雨あがる」726本目

静かな映画。 宮崎美子があたたかく朗らかでとても良い妻の像を作り上げています。 寺尾聡はもともと好きで、地味すぎるかなぁと思ってもやっぱり良いので、言うことないです。 それにしても地味な映画ではあります。 この夫婦は、武家だけどなんというか最…

三谷幸喜 監督「ラヂオの時間」725本目

なるほど、三谷幸喜の面白さってこういう感じなんだな。 舞台っぽい”時間が限られている感”とか”大げささ”とかが、この映画ではプラスに働いているなと思います。 よかった。私この人の面白さがずっとわからないのかな、と以前は思ってたから。 同じようなこ…

ケン・アナキン 監督「史上最大の作戦」724本目

原題はThe Longest Dayですって。「日本のいちばん長い日」の英語版かというようなタイトル。 これを「史上最大の作戦」というタイトルで売るのは、映画会社のマーケターとしてならすごくいいセンスだと思うけど、1962年にこんなタイトルを取られてしまった…

ウェイン・ワン 監督「スモーク」723本目

1995年作品。この映画、何度も見ようとしたんだけど、全然意味が分からなくて、最後まで見られなかった。 なぜかというと、飛行機の中だったから。字幕も吹き替えもなしの英語のままだったから。 面と向かって話す分には、もう少しコミュニケーションが取れ…

佐藤純彌監督「新幹線大爆破」722本目

1975年作品。 あー面白かった!娯楽映画として、大満足です。 あおり方とかストーリー運び、音響効果のつけ方とかが、ウルトラマンとかゴジラの映画を見ているようで(たぶん「わかりやすい」ということだと思う)、これからどんどんスリリングな場面が続い…

舛田利雄 監督「上を向いて歩こう」721本目

1962年の作品。 昭和30年代の娯楽映画って、ほんといいね。みんな元気でタフで目がキラキラしてて。香港やシンガポールやソウルに行ってから東京に戻ってくると、どことなく暗くて元気ないなぁと思うことが多いけど、この頃の東京の映像には原始的で猥雑なエ…

スーザン・ストローマン 監督「プロデューサーズ」720本目

重い映画のあとはこういうのに限る。 下らない、おバカ、という感じで、かる〜く楽しめました。 チャップリンとかロイドとかマルクスブラザーズみたいに笑わせようと思ってるのかもしれないけど、声を上げて笑うところは意外とないです。ミュージカル仕立て…