映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2014-01-01から1年間の記事一覧

テリー・ギリアム監督「バンデットQ」779本目

結末がどうであろうと、これは子どもが見て楽しむハチャメチャな冒険物語、だと思います。事前に解説を見たら、結末が問題視されたと書いてあったので、事故か病気でこん睡状態に陥った子どもの夢オチだったらどうしようと思ってたら、違っててほっとしまし…

ダグ・リーマン監督「オール・ユー・ニード・イズ・キル」778本目

オークランドから戻るJETSTARの機内で見た。 英語だけど、音も最近はきれいに聞き取れるので、おおむね聞き取れました。敵に時間を操られて、毎日死んでは生き返る・・・という設定はとてもスリリングで面白い。しかし「それはつまり自分がゲームの中のキャ…

テリー・ギリアム 監督「フィッシャー・キング」777本目

けっこう古い作品なんだな。20年以上も前。 人の痛みってほんとうに深くてとっても難しいものだな。どうやってこんな作品を締めくくるんだろう、と思っていたら、優しく包んでくれた。ありがとう。みんな裸で生まれてきて、子どものときは自由だ。幸せは人と…

君塚良一 監督「誰も守ってくれない」776本目

ドキュメンタリーとして見ると、とたんに重たくなってしまうテーマが、映画なら見られる。 本当にふつうの家庭が、ある日一瞬にして崩壊する。それも、誰かのせいではなく加害者という立場で。これが本当なら、少女はもっと錯乱したかもしれなくて、見やすく…

クリス・バック、 ジェニファー・リー 監督「アナと雪の女王」775本目

やっと見ましたよ! 王道を行くディズニー作品だと思いました。日本語版も含めて、細かいところまで本当に丁寧に作られています。これは、子どもに見せたい映画ですね。本当に個人的な、私の属人的な感想なのですが、20年前くらいのディズニーアニメはアメ…

ビル・ジョーンズ 監督「モンティ・パイソン ある嘘つきの物語 グレアム・チャップマン自伝」774本目

大人でなければ見ちゃだめ。 細かくパートを分けて、いろんなアーティストに制作させるなんて、思い切ったものです。それにしても血が多いし下ネタはアケスケでどぎつい。エログロナンセンスっていうのは、こういうのを言うんだろうな…。オクスフォード、ケ…

佐藤肇 監督「吸血鬼ゴケミドロ」773本目

名画座で、この映画をはじめとする、日本の昔のSF映画ばかりのオールナイトをやったという情報を見て、タイトルとポスター写真にたまらなく惹かれました、が、オールナイトで「和製宇宙人まつり」を見る気力も体力もないので、レンタル。10分たってからやっ…

ニック・カサヴェテス監督「私の中のあなた」772本目

姉のドナーになるために生み出された妹。彼女にも当然、自分を守る権利がある。「誰が彼女を守ってあげられるんだ?」親が守ってあげないのであれば、裁判にかかることも避けられない。それをイヤらしい法廷ドラマにせず、死というのは避けられないけれど崇…

タナダユキ 監督「月とチェリー」771本目

男は本来ウェットな生き物だから、自分よりメソメソした女はいくら可愛くてもイヤなのね。わかりますわかります。 …みたいな映画(笑)。 江口のりこ(「野田ともうします」の「野田」)は期待を裏切らないし、女性なら誰にでもある残酷さと優しさの描き方が…

デイヴィッド・フィンチャー「ファイトクラブ」770本目

もっとシリアスというかスクエアな映画なのかと予想してたけど、すごくクールな映画だった。 息もつかせない139分間。 これは評価されて当然だ。1999年には、私はシアトルのスタバで嬉しそうにラテを飲んで、北欧家具の店に行ってうっとりしたりしてました。…

松江哲明 監督「フラッシュバック メモリーズ」769本目

人間の体ってのは、音に直接反応するようにできてるんじゃないかと思う、脳を経由せずに。この映画を見ていると、考える前に体が揺れ始めて、字幕を読む前に感情が流れてくるようです。 ブブゼラ、じゃなくてディジュリドゥという長ーい楽器。環太平洋ネイテ…

フランソワ・トリュフォー監督「華氏451」768本目

すごく面白かった。 華氏911と間違えて録画したなんて、もはや誰にも言えません。(書いちゃったよ)「私はエミリー・ブロンテの『嵐が丘』です」 「僕はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』」 などと名乗る”ブック・ピープル”というアイデアに…

ミシェル・ゴンドリー監督「ムード・インディゴ うたかたの日々」767本目

難しいなぁ。困った。 ゴンドリー監督大好きなんだけど、きょとんとしてるうちに終わってしまった。 ミュージックビデオだけじゃなく、「エターナルサンシャイン」もすごく好きなのに。 この映画に入り込める人は、文字バージョンの「うたかたの日々」をよく…

アーサー・ヒラー 監督「ある愛の詩」766本目

1970年ってもう40年も前だ。 この映画のことは、大昔からうっすらと知っていたけど、意外な部分もたくさんありました。 彼と彼女はとってもエリートで、いかにもアメリカのエリートらしく皮肉っぽく早口で機知を争うようにしゃべりまくる。「ソーシャル・ネ…

山崎貴 監督「ALWAYS 三丁目の夕日」765本目

ちょっと期待しすぎたかな。 自動車工場に女の子を雇うことが普通っぽくないし、東大出の駄菓子屋がなんか演技がおおげさだし、どうもすっと入っていけないわだかまりがたくさんある映画でした。

ブライアン・デ・パルマ 監督「殺しのドレス」764本目

短い映画で、途中から勘を働かせると(もしや…?)とタネがわかってくるけど、いい感じに洗練されていて、懐かしきアメリカ70〜80年代ドラマの味わいがあります。最後の最後の倒錯の大爆発は、ストーリー展開上なくても良い感じで、かつ長〜いんだけど、やり…

ロバート・クローズ 監督「燃えよドラゴン」763本目

もちろん見たことあるけど、改めて見ました。 ブルース・リーという素晴らしい生き物を記録に残す上で、貴重な映画だと思いました。 映画の作りそのものは、B級以外の何ものでもないけど…。 しかも、スピリチュアルな雰囲気を漂わせる仙人めいたアジア人(し…

小津安二郎監督「晩春」762本目

小津映画の”わざとらしさ”が、笠智衆と原節子にだけある。杉村春子も月丘夢路も演技は自然なのに、この二人はいつも微笑んでいる。そんなアルカイックな地上の桃源郷のような美しさにいつも見とれてしまうけど、不自然なものは不自然だとも思っていました。…

アレハンドロ・ホドロフスキー「エル・トポ」761本目

あのホドロフスキーの出世作。 ジョン・レノン&オノ・ヨーコが大絶賛したとか、いろんな評判を聞くけど、自分が神になって監督も主演もなんでもかんでもやって、息子も出演させるなんて映画は、狂人の世界だから面白いというなんだろうと思う。私はダリは好…

スティーブン・スピルバーグ監督「プライベート・ライアン」760本目

これは、見ておくべき映画だな。 アメリカで作られた戦争映画をこのところ何本も見てきたけど、実際はどれくらい人が死ぬんだろうとか、弾がどこに当たっても死ぬんだろうか、手当はしてもらえるんだろうか、どれくらい痛いのか辛いのか、といったことが全然…

バイロン・ハスキン 監督「宇宙戦争」(1953年)759本目

おもしろいというか、つまらないというか。 ストーリー映画としては、抑揚が強すぎる冒頭ナレーションや、とさかみたいな女の人の髪型や、過剰な演技とかが気になりすぎて、すぐに飽きてしまった。 最初にやられる人たちが、近所でキャンプしてるというのど…

スティーブン・ソダーバーグ監督「トラフィック」758本目

むずかしかった。こういう風にパラレルで進行していく映画って、スリリングで好きなんだけど、この映画は苦労しました。3回見た。 「麻薬取引の目撃者」のストーリー(画面が比較的自然な色合いのやつ)は、誰がずっとストーリーを牽引する人物なのかわから…

成島出監督「八日目の蝉」757本目

良かった。エンジェルホームと写真館の演出がやりすぎだったけど、良かった。テレビ版(壇れいと北乃きい)がすごく良かったので、今更見ても…と思ってたけど、こっちもすごく良かった。むしろ、テレビ版はCMのような秒単位の起承転結が多くて、すこし演出過…

ルイ・マル監督「プリティ・ベビー」756本目

この手が好きな人には堪えられない映画でしょうね。 12歳のブルック・シールズは、あどけなく崇高に美しいです。 ただ、同年代で同じく少女娼婦を演じたジョディ・フォスターのようなプロ意識や成熟が彼女には感じられず、”普通だから良い”というのがこの…

スティーヴ・ベンデラック 監督「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」755本目

イギリス人はフランスのことをこう思ってるのか〜。 特に音楽。内容と関係なくアンニュイなかんじ。 しかし「男と女」からもう50年近くたってるわけだし、全体的に昭和の香り(外国だけど)が漂っています。 ギャグはおおむね「予想通り」の展開で、テレビ…

ピーター・ウィアー監督「いまを生きる」754本目

原題がいいのに邦題はわりあい印象薄いですねー。(「The Dead Poets' Society」というのが原題です。) ロビン・ウィリアムズ先生はいつものように人情派。 学生たちの中には、まだ初々しいイーサン・ホークがいたりします。お堅い学校の子ども達にも、自由…

熊井啓 監督「黒部の太陽」753本目

大作かつ力作。三船敏郎ってやっぱりカッコいい。 石原裕次郎は、無鉄砲な若者役から大人のリーダー役への移行期間中、といった感じ。昔の労働集約的な現場や大規模工事の犠牲者の数の大きさ(170余名だそうです)は驚きだったけど、昔も今も、現場で真剣に…

ゲオルギー・ダネリヤ 監督「不思議惑星キン・ザ・ザ」752本目

この映画おもしろすぎる。 たいがいのアメリカ製のコメディより爆笑できました。 南の国から来たバナナの箱の中に入ってた猿といわれて、チェブラーシカを想像する国の人たちですから、世界観の違和感は半端ないです。「めずらしいものに出会う」という映画…

ヴェラ・ヒティロヴァ 監督「ひなぎく」751本目

へんな映画だった。可愛い女の子二人が、これでもかこれでもかと、少女なりの破壊のかぎりを尽くす映画だった。そこまでやるか?と違和感を感じたんだけど、そういう違和感には意味があることが多い。 この映画がつくられた1966年のチェコスロバキアは、ちょ…

セルゲイ・パヴィッチ監督「ホドロフスキーのDUNE」750本目

わたしはスティングが出てるDUNEも、それなりに楽しく見た記憶があるんだけど、当時もあの映画は激しくバカにされてた気がします。映画のなかで何度も出てくる「DUNEバイブル」は、そのまま豪華革張り本として発売して、それだけを学ぶ1年くらいのコースを…