映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンドリュー・ヘイ 監督「さざなみ」1534本目

イギリス作品、2015年。
「ミラクル・ニール」が85分、これは95分。短くていいです。ダニー・ボイルの作品も短いの多いし(テレビ映画として作られたからかな)、イギリス映画の伝統だとしたら大歓迎です。

シャーロット・ランプリングいいですね。往年の色気を感じさせつつ、きれいに枯れてる。
若い頃エロい役で印象的だった女優さんが歳を重ねたのって、素敵。
シャーロット・ランプリングといえば「愛の嵐」。倍賞美津子なんかもシワの一つ一つが美しいです。
静かな草地の風景も素敵。

それにしても邦題がすばらしい。原題は「45 Years」、彼女たち夫婦の45周年。それよりも妻の心に立った小さな波に着目した方がいい。日本語の予告編の、”妻の心はめざめ、夫は眠りつづける”ってコピーも秀逸。
本当に深いいい映画なんだけど、これを初めて気付くような顔で見るのは眠り続けていた夫の方だろうなぁ。
妻は(みんなじゃないのかもしれないけど)夫の心が自分以外の人に動いていくのを、まるで重力でりんごが落ちるのを見るように、はっきりと正確に認知してるものだと思う。だからたいがいの女性は、ラストの妻の表情を見て、ああ自分も鏡の中に同じ表情を見たことがあるわ、と思うんだ。

誰かと45年間しあわせな結婚生活を送るのって、どんな感じなんだろう。
なぜ45年も、さざなみが立たなかったんだろう?

点数は78点、「7ファクターズ」だと苦情かな。

(注)7ファクタータグは以下の7つの指標で映画の特徴を客観的に表現しようとしたもの。 「美」美しさ、「黒」 腹黒さや悪徳、「苦」人生の辛さや哀しさ、 「楽」愉快・楽しい、「情」情感、温かさ、「新」表現、技術、アイデアの斬新さ、「謎」引き込む謎がある