映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「ペイン・アンド・グローリー」3563本目

アルモドバル監督の作品はほとんど見てるけど、劇場で見たのはこれが最初。新作「パラレル・マザーズ」を折をみて見に行こうと思っているいま、この作品を見直してみました。

劇場で見たときは、色の洪水!と思って圧倒されたけど、家のテレビで見ると、監督の自宅の家具も舞台での役者の服装も、全然印象に残らなかった。これは劇場だからというより、家のテレビの彩度に問題がありそうだな(調整がうまくできない)、こうやって他の映画の美しい場面も見逃してるのかもしれません。

筋はだいたい記憶通りだけど、メルセデスはもうちょっと監督と一緒に暮らそう、暗いな感じで食い下がってた気がする。劇場につづいて涙ぐんでしまったのは、サルバドールとフェデリコが数十年ぶりに過ごした短い時間のあとの別れの場面。もう二度と会えない、会わないかもしれない。でもどんなに幸せな人も不幸な人も、愛し合ってる人たちも憎み合ってる人たちも、永遠に一緒にいられることはなくて、みんな等しく別れがくるんだよな、って思って切なくなってしまった。最近こんな気持ちになることが多いな。どんなに面白いドラマもつまらないドラマもいつかは終わる。(「コロネーションストリート」は別か?)

最初に見たときほどサルバドールとアルモドバル監督を重ねては見なかったかな。一人の才気あふれる映画監督の栄光と苦悩が、特別に優れた人ということではなく、一人の才能ある、悩む人間として響いてきました。やっぱりこの作品は、枯れてる。

この次の作品って、変化がみられるんだろうか。早く見に行かなくちゃ・・・。