映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

石川慶 監督「ある男」3636本目

アイデアは既視感がある。でも安藤サクラ、窪田正孝、妻夫木聡をはじめとする役者さんたちの演技がよくて、ぐいぐいと見せてくれました。出自を偽りたい事情のある人はたぶんたくさんいて、それぞれに深くて暗い物語があるから、まだまだ映画はこのテーマを語りつくせてないと思います。

葬式にやってきた夫の兄(眞島秀和)と、妻(安藤サクラ)とのやりとりとか最高。「写真がないですね」(最初はスルー)「写真とか置かないんですか」「ありますけど」「え、これ弟じゃないですよね」「夫ですけど」「違いますよ」「夫ですよ」「いや全く別人です」「え、そんなに変わりました?」「変わったとかじゃないですよ、違う人です」・・・みたいな、いかにもありそうな、お互いの信じていることのすれ違いが、自然で引き込まれます。

柄本明の癖のカタマリみたいな演技にも持っていかれますね。

ただ・・・一番最後の、妻夫木聡がどこかのバーで他の客と話す場面。あれをどう捉えるか。「蛇足」じゃないか?という気もします。みんなどう思ったんだろう。これから他の方々の感想も読んでみようと思います。