映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニス・タノヴィッチ 監督「汚れたミルク あるセールスマンの告発」2734本目

「セプテンバー11」でボスニア・ヘルツェゴビナ代表で短編の監督を務めた人の作品だた。私は某英語学習教材の中でネスレの粉ミルクの問題に触れているのを見たことがあって、レンタルしてみました。

清潔な水がなければ使えない粉ミルクを、汚い水しか入手できない地域で販売すること。スイスの研究所の人にバングラデシュの水事情を正確に想定するのは難しいけど、現地営業はわかったことを本社に伝えて是正する責任があります。学習教材を見たときは、地元のことを良く知ってる現地の営業員が現場を仕切ってるとは思わなかった。若い営業員が問題を現地の医師から伝えられたところでやっと、現象と原因がつながった。ここがスタート地点となります。

正しく告発を行った医師や営業員を脅迫し、排斥しようとするのは、リベートを受け取り続けていた現地の他の医師たちだった。リベートを社内規程で禁止しつつ黙認していた企業の責任は重大だけど、現地の倫理感がこの状態でどうやって改善すればいいんでしょうね。新聞販売店の営業インセンティブみたいなもので、監督責任と同じかもっと、現地で身近に死にかけてる赤ちゃんを無視しながら私利私欲を追求した医師と営業員の問題が解決しない限りどうにもならない問題だ。

映画1本見ただけではわからないこともある。映画の中でもちゃんと言ってるんだけど、この問題は1930年代から顕在化していて、ネスレは1970年代に改善を約束しています。約束が守られてないっていう問題はずっと続いてる。みんなが知ってる問題を1980年代に握りつぶせると思っていた現地の会社の人や軍部がいたってことが、根深い問題なんだ。

世界中のどこでも、どの会社でも起こりうる、起こりつつある、かつて起こったことがある問題として捉えて、常に自戒して周りにも注意を向けていない限り、防ぐことはできないことなのだ。蚊帳の外から批判だけしたくなった人は、今自分が被害者の関係者でも加害者の関係者でもないことに感謝したほうがいいのだ。(関係してることに気づいてないだけかもしれないけど‥‥)

汚れたミルク/あるセールスマンの告発(字幕版)

汚れたミルク/あるセールスマンの告発(字幕版)

  • 発売日: 2017/08/19
  • メディア: Prime Video