映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランシス・フォード・コッポラ監督「ワン・フロム・ザ・ハート」2228本目

クレジットを何も見ないでこの映画を見たら、誰が作ったと思っただろう?コッポラとは思わないだろうな。映像のセンスは抜群だけど中身の薄さ、キャスティングの微妙さで、新人監督だと思ったかもしれない。

一言でいうと、不出来な「ラ・ラ・ランド」か・・・。この映画を見たデイミアン・チャゼル少年が(まだ生まれてないけど)、「僕が将来もっといいミュージカルドラマを作る!」って奮起した、みたいな。

主役の二人がすごく普通なんだけど、彼氏の友人がハリー・ディーン・スタントン(まだ枯れ始めていなくて、女好きな男の役)、彼氏が惹かれるサーカスの美女はナスターシャ・キンスキー(あまりに美しくて驚いた)、彼女が出会う自称ピアノ弾きは、アダムス・ファミリーのお父さん役だったラウル・ジュリア(この人大好きなので久々に見られて嬉しい)。

トム・ウェイツって、なんか渋いみたいなイメージだけど、こういう音楽とかやっちゃうところがコマーシャルすぎて好きじゃない・・・。

全部室内ロケにするために町全体の巨大なセットを組むなんて、金に任せたゴッドファーザーの気まぐれみたいだし、“お気に入りの場所”はディズニーランドの室内レストランみたい。主役の二人の気持ちはわからなくもないけど、最後に戻ってくるのはピンとこなかった。歌で芝居を表現しようと思うと、ストーリーの方が薄くなっちゃうのかな。ゴージャスだけどう〜む、な作品でした。