映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

竹馬靖具監督「そこにきみはいて」 4006本目

おずおずと、若い頃の心の痛みを告白するような映画でした。しずかに、自分と聴き手の痛みを意識しながら。

クラウドファンディングとか卒業制作として作られた作品のような、手作り感がときどき見えます。でも役者さんたちはきわめてプロフェッショナルで、みなさんすごく良かった。”かおり”を演じた福地桃子、童顔で小柄で小動物みたいに可愛らしい人ですが、冷めた心を持っていて、どのショットを見てもクールです。こういう演技ってけっこう難しいんじゃないのかな。うまいなぁと思いました。相手となる”たける”、寛一郎にも誰かに夢中になれないトラウマがあるけど、もっとやわらかい心をむき出しにしてずっと傷ついているような人。途中からかかわってくる彼の”学生時代の親友”である中野に出会い、かおりと中野はたけるの足跡をたどろうとする。かおりは退職、中野は作家で時間が比較的自由、といっても、二人で何泊もしながら旅をするのはあまり現実的ではありません。つまりこれは…誰かの心をたどって傷をいやすためのファンタジーの中の旅なんだ。この映画、原案が中野を演じた中川龍太郎ということで、彼あるいは彼の周囲の人の、映画と同じではないだろうけど、何らかの心の傷をどうすればいいんだ、と悩んだことがおおもとにあるのかもしれません。だからか、ファンタジーだけど絵空事とか綺麗事って感じはないんですよ。

中野の現実的な妻を演じた朝倉あき、たけるのちょっと押しつけがましい母を演じた筒井真理子もうまいし、強烈だったのはかおりの会社の後輩。いわゆる女子、というキャラだった彼女が、かおりの送別会の後からんできて、とんでもない暴言を吐く。それでありながら、かおりを追ってきて本心を吐露する。HKT48出身の兒玉遥が振り切った演技を見せていて、頼もしいです。

良さを説明するのが難しい作品なんだけど、伝えようとしていることは受け止めたぞ!と製作者や出演者のみなさんに言いたい気持です。

ちなみに、2年近く前にこの映画のエキストラに参加したのですが、冒頭近くの会社の飲み会では自分の姿は見つけられず、送別会帰りの路上では私も混じっていたよっぱらいの集団の端っこにいるのが映ったような映ってないような、そんな感じでしたが、エンドロールにはフルネーム出てた!あのときのお弁当、美味しかったです…。