映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

想田和弘監督「Peace ピース」3172本目

ボランティアは手弁当なのだ。手弁当ということは、弁当も自分で作るし電車代も何も出ないのが普通と思われている、ということだ。どこの政府もきっと、ボランティアとかやる人はたっぷり年金をもらって時間を持て余している老人か、夫の稼ぎで働かなくても食べていける妻だと思ってるんだろう。わずかな補償では出費をまかなえないボランティアも多い。人は、善意の人の努力や忍耐に甘えるのだ。

年金の額も減り、時間のある人にお金がないのが普通になっていって、ボランティアができる人は多分減っていくだろう。何と呼ぼうと仕事なんだから、都道府県の最低時給くらいはなんとかならないんだろうか‥‥

という胸の痛くなる問題とは別に、猫たちと人間たちの表情、そこにはピースの箱も平和もある。この静けさに憧れる企業人も多いんじゃないかな。厳しい現実を知ったとしても。だけど普通は、追い立てられるように稼ぎまくる人生にも、平和ながらも貧しい人生にも、なにか解決するために動く人は多分多くない。前者と後者の行き来は、→の一方向だけ。そう考えると、NHKのドキュメンタリーに始まってフリーの映画制作を続けている想田監督も、BBCから独立したケン・ローチも、いたたまれない思いが他の人より強いんだろうな、と想像する。彼らが現場を捕らえて世界に発信することでしか解決に向かわない問題がたくさんあるので、→に向かったときの思いをずっと作品にし続けてほしいなと、勝手な一市民として思ってしまいます。

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