映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」1073本目

2006年の映画。もう9年も前です。
激しい戦闘シーンは、揺れるカメラや、弧を描いて飛んでくる手榴弾など、自分がその場にいるように臨場感があります。その場にいて石のような心になっていたように思えてきます。この映画は、そういうリアリティをすばらしい技術でかもしだしていても、中心にあるのは人間の心を描いた映画だということです。

「味方にやられた!!」
戦争はひどいけど、そのなかでもひときわ救いがない。敵に、非人道的なこともした。自分たちもされたけど、やり返した。ヒーローっていう言葉と自分たちのやったことが、どれほど遠いか。

アメリカの人たちは、うまいこと人をおだてて、思い通りに世の中を操るのがうまい。
操られるのは、超エリートとかではない、ふつうの人たちだ。ふつうの人たちが戦地に行って殺りくをさせられ、ひどい死に方をし、国債を買わされる。戻ってきてからも死ぬまでさいなまれる。

戦地の青年たちが、その後国に戻ることも結婚することもできず、その場で終わりを迎えたということが切ないです。違う国の人でもこんなに切なくなるのに、どうして戦争なんかしようと思うんだろう。
アメリカに行ったときに元軍人の人に「日本からきました!」と笑顔で言うと、一瞬ちょっと戸惑った顔をすることがある。どういう気持ちなんだろう?まだ私にはそこまではわかりません…。