はー、私はもうズブズブと映画沼の深みにはまる一方だ、と、この映画を見ながら思う。今あえてこの映画を掘り起こして見る人がいったいどれくらいいるんだろう。
でもこの映画、公開当時を覚えてる。たぶん、当時熱心に聞いてたロック界隈でもこの映画は話題になってたからだと思う。
順番としては、ヘルツォーク監督の「アギーレ」「フィッツカラルド」を見てそのアクに当てられた後なので、そもそもがドロドロな世界であるドラキュラ物語と監督の世界がいったいどう融合するのか、それとも反発しあうのか、気になります。
さっそく冒頭の子どものミイラたち、あれは何なんでしょうか。調べてみたら、メキシコのグアナファトにあるミイラ博物館展示されている1833年のコレラ大流行の犠牲者たちのご遺体だそうです。ドラキュラとミイラは何の関係もないけど、この世界観の一致、違和感のなさ、恐怖を高める効果。
ブルーノ・ガンツって若いころから顔がシリアスなんだよなぁ。笑っても何をしても真摯で誠実な人という印象が強い。これは彼の本性なのか、それとも見た目で得をしているのか。イザベル・アジャーニは可憐で美しいけど、この30年後もまったく同じルックスだった気がするのは、彼女がヴァンパイアだからでしょうか。業界随一の無垢な瞳の男女が揃いました。そこに出てくるドラキュラ伯爵化したクラウス・キンスキー。ブルーノ・ガンツの誠実なルックスと並ぶと、こんなにインチキ臭い白塗りのキンスキーがちゃんと実在のドラキュラ伯爵に思えてくるからブルーノ・ガンツすごい。(そっちか)
しかしほんとに全員パーフェクトなキャスティングだな。イザベル・アジャーニの驚いた顔は、まるでリリアン・ギッシュみたいに無垢だし、クラウス・キンスキーはそもそもこの世のものと思えないうえ、ゆらゆらとした喋り方がまたはまってる。笑う男は誰だ?マザー・グースのイラストみたいなルックス。
ほんとに、びっくりするくらい完成度高い映画でした。監督のイカれた美意識が行くところまで行ってる、という意味で。これはキワモノとして当たるのは当然で、もっと見たかった、ちょっと物足りなかった。なんならテレビシリーズにしてほしいくらいです。