映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アラン・J・パクラ監督「コールガール」2667本目

なんか全体的に暗い映画ですね。サスペンス映画みたいだけど筋はわりと追いづらい。ジェーン・フォンダ演じる「高級コールガール」とドナルド・サザーランド演じる「私立探偵」というハードボイルドで都会的な人物像が魅力的に描かれているので、それだけで映画の楽しみとしては十分ではありますが。

筋が追いにくいのは、コールガールの動きが筋と関係ないものが多いからかな。カウンセリングに行ったり、なんとなく深遠なことをつぶやいてみたり。身体を売る身だけど女優のはしくれでもあり、それ以前の教育の高さも感じさせる。普段の生活は至って地味で普通の女性。映画の原題は私立探偵のほうの「クルート」なんだけど、人物像を詳しくなぞられるのはコールガールのブリーの方なので、邦題「コールガール」は正解じゃないかな~。日本公開時に「クルート」ってタイトルだったらけっこう戸惑ったかもしれません。私立探偵クルートの方は、かなり早い段階で怪しまれている依頼主とブリー、関係者たちの間を行ったり来たりしながら自分は真実を知らずに右往左往しているように見えます。

ジェーン・フォンダの印象は「バーバレラ」なので、まったく失礼な話だけど「この人ほんとはあたまいいんだなー」という印象…言ってる私自身がバカっぽくてすみません… とにかく演技派だったんだなぁと改めて。彼女のイメージって、かわいこちゃんとして大売れして、社会問題に目覚めて自分でどんどんアクションを起こすようになるところが今でいうリース・ウィザースプーンみたい。売れた自分の地位におぼれず、つぶれず、自分で考えて変わっていけるのって、なかなか真似できません。

この映画の暗さって「ルパン三世」っぽいんだな。ニヒルというか厭世的というか。一つの世界を確立しているのがなかなか素敵でした。

コールガール [DVD]

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  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: DVD