映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

久保茂昭 監督「ゴールデンカムイ」3994本目

北海道の、マリモで有名な阿寒湖のあたりにアイヌの集落があって、行ってみたらそこにあったのは暮らす人たちの日常と、木彫りの熊やキーホルダーなどで、そこが質実剛健なアイヌの人たちらしさなんだろうと私は思ったんだけど、わざわざ付き合って行ってくれた友人は「何も見るところがない」と退屈してしまいました。世界中の文化から面白いところをどん欲に取り入れてきた日本の中心部から見れば、見るべき点はすごく少ないのかもしれない。でもなんかすごく切なくなったんだよなぁ…。

そのときに原作の「ゴールデンカムイ」のことを知って、ぱらぱらと読んでみた記憶があります。「アイヌモシリ」も見たな。アイヌの人たちのたたずまいって、なんか深くて潔くて謙虚で、そこにいるだけで「意味がある」ような感じを受けます。

でこの映画。実写映画化の前から主役は山崎賢人だとわかってたような気がするくらい、彼って少年マンガ顔だしキャラクターも強く明るくまっすぐです。彼自身が人間というよりキャラクーなんじゃないかと思いそうなくらい…。で山田杏奈は原作では子どもか。顔が原作と似てるしキャラクターも合ってるからいいんじゃないでしょうか。子ども時代を演じた子役もかわいくてうまいので、そのままでもよかったかもしれませんが。玉木宏はいつも、渋いながらも明るさもあるけど、今回は奥深く悪い。いい悪役です。

ほかの出演者も家や衣装、集落の様子なんかも、美しくて納得感があって、見飽きません。がストーリーはあまり動かず。登場人物の造形をていねいになぞっていて、大河ドラマの第一回みたい。(大河ドラマでこれを取り上げるのってアリだろうか、と一瞬考えてしまった)

それにしても熊に襲われる場面には緊張してしまう。「熊には気をつけろ」という教訓映画としても見られそう…。