映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2012-01-01から1年間の記事一覧

新藤兼人監督「三文役者」87

2000年作品。原作を読んだら見たくなりました。 新藤監督作品にいつも出てくる殿山泰司の、監督の筆による伝記を映画化したものです。彼の出演した映画の一部や、彼と映画を作った人たちによる語りがところどころ実録として出てきますが、おおむね全編は別の…

五社英雄監督「極道の妻たち」86

1986年作品。このブログではもはや「むかしの日本映画」と分類している作品です。感想。B級中のB級だった…精気を抜かれるほど。ブログで感想を書いた作品では「女囚さそり」に匹敵するB級度だなぁと思いました。匹敵もするし似てもいます。女性どうしの取っ…

増村保造監督「暖流」85

1957年作品。だいぶ前にTVでやったのを録画してて、やっと最後まで見ました。 「けれん味」っていうんでしょうかね。みょうに時代感のあふれる、今ならキムタクの演技のような、気取っていてオシャレな感じの“わざとらしさの美”。ヒロイン野添ひとみの美しさ…

篠田正浩監督「鑓の権三」84

1986年作品。近松門左衛門の浄瑠璃『鑓の権三重帷子』の映画化です。テーマは「不義密通の濡れ衣を着せられた美青年と人妻の道行」。歌舞伎というものを見に行ったことがほんの数回あるのですが、行くたびに人の、特に女性の命の軽さやお家というものの重さ…

古澤憲吾「ニッポン無責任時代」83

1962年作品。 NHKBSでやってる「山田洋次監督が選ぶ100本」を録画して見ました。 おかげで、山本晋也監督による詳しい解説もあって、ありがたい。ま〜適当な映画だなぁ!・・・と楽しく、かつ苦々しく?見ました。 見るときの気分によるんだけど、私にはこう…

篠田正浩監督「はなれ瞽女おりん」82

1977年作品。いい映画でした。 始まってからしばらくは、見てるのが切なくてたまりません。芸は一流だし、前向きに毎日歩いて行く彼女たちですが、外から見ている私たちには小さく寂しく見えるのです。「ごぜ」というのは盲目の女性旅芸人。同じ立場の女たち…

ジョン・スタージェス監督「荒野の七人」81

1960年作品。 「七人の侍」の流れでどうしても見たくなりました。当時きっとスター・ウォーズのように受けたんでしょうね。スケールが大きくて俳優さんたちがカッコよくて、痛快で勧善懲悪。 映画そのものは、何度繰り返して見ても見逃してるシーンがたくさ…

篠田正浩監督「心中天綱島」80

1969年作品。近松門左衛門の人形浄瑠璃(今は歌舞伎の定番的な演目)の映画化。タイトルを見て誰もが、不倫の果てに男女が心中していく様子を楽しみ?に見るわけで、心中する方もする方だけど喜んで見る方も見る方です。いまでいう、ケータイ小説のようなも…

黒澤明監督「七人の侍」79

1954年作品。 うう、面白かった。最高おもしろかったです。 207分という長尺作品ですが、夢中になって一気に見ました。 むかしからうっすら知ってた映画でしたが、実際に見てみて驚いたのは… ・あまりに長い、DVD2枚組、しかし飽きさせない。 ・百姓が侍を「…

中村登監督「古都」78

1963年作品。この頃の作品が続きます。63年だけどこの映画はきれいなカラー。地味な着物の色合いもよく出ていますが、主人公の二人の顔色の白さと黒さも際立って、カラーであることが効果的。主人公は岩下志麻の一人二役で、一人は呉服問屋のお嬢様。実は捨…

内田吐夢 監督「飢餓海峡」77

1965年作品。この年に公開された作品が続きますね。 「いそしぎ」の1965年はベトナム戦争まっただなか、芸術家コミューンの自由な考えと牧師というお堅い世界の代表が一瞬クロスして、また離れていくという動きが、不倫ストーリーの裏にありました。「赤ひげ…

黒澤明監督「赤ひげ」76

1965年作品。黒澤作品って、こういうホームドラマ的なもののほうが好きかも・・。 三船敏郎がすでに初老の感じで貫録がありますが、当時まだ45歳かぁ!!185分の長尺の映画ですが、オムニバス形式(昔の映画に意外とよくある)で、三船敏郎演じる「赤ひげ」…

ヴィンセント・ミネリ監督「いそしぎ」75

1965年アメリカ作品。TVでやったのをだいぶ前に録画しておいたのを、やっと見た。 テーマ曲が有名すぎますが、映画のイメージはまったくなかったので、へぇーこういう映画なんだぁー、と言いながら見ました。今日のひとこと:「いそしぎ」って「磯鴫」ってい…

降旗康男監督「駅〜Station」74

1981年作品。日本の港町の風情って、荒っぽくて強くてからっとしてて、いいです。うっとりするような、しかし湿っぽくならない情緒のあふれる映画でした。この映画ってオムニバスストーリーだったんだな。 高倉健演じる、射撃の名手の警察官と、そのもと妻や…

松田優作監督「ア・ホーマンス」73

1986年作品。 新宿大ガードの下を中野方面からくぐって行くときの、オッペン化粧品のあじさいみたいなネオンとか、サクラカラーとかサンペイグッドカメラとか、上京したころに見ていた景色が冒頭から出てきて、フラッシュバックのような感覚をおぼえました。…

ケン・ラッセル監督「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」72

1979年作品。キノコでトリップしてゴリラになった映画だった。 最近変な映画ばっかり見てるなぁ。(語弊を恐れず、というか、明らかに変わった映画ばっかりだ)もう少しちゃんと説明すると、とある立派な大学教授が、水の中に浮遊して精神をリラックスさせて…

原一男監督「ゆきゆきて、神軍」71

1987年公開作品。なんでこんな日にこんな映画を見てしまったんだろう。 善と悪と運命と人間と、いろいろな思いが渦巻いて混乱しています。とにかく強烈な実録映画でした。あのマイケル・ムーアが史上最強のドキュメンタリーと評したのも無理はありません。実…

私立探偵 濱マイク 12 利重剛監督「ビターズエンド」70

SIONが、マイクの少年院仲間として登場。血も涙もない殺人者として恐れられている彼は、銃の取引で金を持ち逃げした少年を追っています。少年の恋人に暴力をふるって居場所を吐かせて、銃を片手に少年を倉庫に追い詰めたら・・・。「仲間を命がけで助ける」…

私立探偵 濱マイク 11 Alex Cox監督「女と男、男と女」69

Alex Cox監督の映画って実は見たことがないので、比較できないのですが、撃ちまくりの銃撃戦が横浜で繰り広げられるというリアリティのなさが魅力?でしょうか。 ギャングがカラカラカラカラと高笑いしながらひたすら撃ちまくるのが不思議なおもしろさです。…

ケン・ラッセル監督「TOMMY」68

1975年作品。こ…これは映画か? 大好きなThe Whoのロック・オペラだし、映画「さらば青春の光」は昔見て感動した覚えがあるし、第一TOMMYは10年前にロンドンで舞台を見たときにとても良かったので、若干期待してたのは事実です。予想とかなり違う、…うーんと…

「色を奏で いのちを紡ぐ 染織家 志村ふくみ・洋子の世界」67

2011年作品。色って何だろう? それは光がものに当たって反射し、目を通じて脳で感知された反応です。 つまり「色」というものがあるわけではありません。 多分人間一人ひとりが感知している、あるひとつのものの色は、みんな少しずつ違う。 違う生き物が感…

北野武監督「あの夏、いちばん静かな海」66

1991年作品。 90年代といっても、80年代バブルの名残のくりくりソバージュと太眉、巨大なイヤリングなどがさびしく健在。飽食に疲れたバブルの民が求めたせつないファンタジーというかんじの映画です。聴覚障害者どうしの恋愛なのに、実際に町で見かける人た…

渋谷実監督「本日休診」65

1952年作品。井伏鱒二原作(読んでないや)。東京といっても郊外、平屋の家もまばらで、ドラム缶ばかりが打ち捨ててあるどぶ池のそばに「三雲病院」は建っています。 今日は開院記念日で休診。だけど、上京したてで迷っているところを騙されて傷つけられた女…

久松静児監督「神阪四郎の犯罪」64

1956年作品。 いやーー面白かった!すごい映画です。神阪四郎(森繁久彌)はある出版社の敏腕編集長。女好きでお金に節操がない彼の周りには、偉そうなくせに手癖の悪い作家や、男に遊ばれつつ自分もうまく利用している事務員や、貞淑を絵に描いたように見え…

私立探偵 濱マイク 10 竹内スグル監督「一分700円」63

かつてマイクが世話になった牧師が人探しを依頼してくる。ある人間的な感情をもてない少年の行く末を案じてのことだった。彼は殺し屋になっていた。殺そうとする相手とロシアンルーレットをやって、まだ負けたことがない。スピード写真のブースで、人を殺す…

松本人志監督「さや侍」62

2011年作品。これで、今までに公開された松本人志作品は全部見たことになります。 NHKでやってた「松本人志のコントMHK」スペシャルで、この作品をヨーロッパで上映した時の観客の感想インタビューをやってましたが、絶賛する人たちにまぎれて「大好きだった…

私立探偵 濱マイク 9 中島哲也監督「MISTER NIPPON〜21世紀の男」61

これおもしろい! この回のこともよく覚えてるけど、あらためて見直して、作りこみの素晴らしさに感動さえおぼえます。この監督、「告白」とか「嫌われ松子の一生」とか、この作品(2002年)のあと最近になって大活躍してますが、そりゃ当然だ。ファッション…

久松静児監督「警察日記」60

これも1955年作品。 会津磐梯山近くの町の警察署にやってくる人たちを日記のように描いた、生活感と人情あふれる映画です。起承転結があるわけではなくて、ロードムービー・・・というより定点待ち受けムービーです。戦後の貧しい生活に耐えて生き延びようと…

佐藤武監督「スラバヤ殿下」59

1955年作品。とっても楽しい娯楽映画です。 なぜか手塚治虫のアニメを思い出しました。 原作は「君の名は」で有名な菊田一夫。 スラバヤというのはジャワ島にあるインドネシア第二の都市だそうで、同名のインドネシア料理店がいくつも検索でヒットしたりしま…

スティーブン・スピルバーグ監督「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」58

1989年作品。ということは私の分類でギリギリ「古いほう」ですね。 BSでやってたので見ました。インディ・ジョーンズシリーズは何作か見た覚えがあるけど、これはあんまり覚えがないなぁ。最近の冒険活劇系の映画としては、ハリポタものなら全部見てますが、…