映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2012-01-01から1年間の記事一覧

アンリ・ヴェルヌイユ 監督「ダンケルク」117本目

フランス・イタリア合作で、1963年公開。カラー作品です。昔の映画って、しょっぱなはあんまり面白そうじゃないものも多い・・・知ってる俳優がいなかったり、あっ!と思うような美しいショット、美しい出演者、すごい展開とかがないと、その世界に入って行…

リュック・ジャケ監督「きつねと私の12カ月」116本目

2007年のフランス作品。 山の中で暮らす少女が野生のキツネに心ひかれ、少しずつ仲良くなっていくのだが、愛するあまり人間の生活に引き込もうとしてしまい、悲劇が起こる・・・というストーリー。「愛する者を自分のために縛ってはいけない、ありのままの自…

青柳信雄監督「雲の上団五郎一座」115

1962年作品。 旅芸人一座のリーダー「雲の上団五郎」はエノケン。もう若くはありません。病気が悪化して、この映画の直後に右足を切断したそうです。 インチキっぽいプロデューサーにフランキー堺、小屋の社長がアチャコでその娘が水谷良重。劇団員に由利徹…

市川昆監督「プーサン」114

1953年作品。 この時代は、がれきの山を抜け出して未来を築こうという、希望に満ちた時代だったんじゃないの?当時の朝日新聞に連載されていた4コマ風刺マンガの映画化なのですが、せっかく大学を出てもウダツの上がらない主人公は失職し、好きな女性にも振…

エルンスト・ルビッチ監督「生きるべきか、死ぬべきか」113

なんと1942年、第二次大戦中のアメリカ作品。 「午前0時の映画祭」で見ました。 いやーまあアメリカってのはほんとにフリーダムな国だったんだな。 ナチスが台頭してきたポーランドの役者たちが、得意の演技を駆使しながら、スパイによる祖国の家族の迫害を…

フランソワ・トリュフォー監督「あこがれ・大人は判ってくれない」112

2本の作品が1枚のDVDに入ってるのを借りました。 「あこがれ」は短編で1958年公開、「大人は判ってくれない」は1959年公開。 なぜ借りたか思いだせないけど、感想です。画面が美しくてなんとも引き付けられます。 「あこがれ」で少年たちが憧れるショートカ…

クリスチャン・ジャック監督「花咲ける騎士道」111

1953年、フランス作品。中世フランスのある村に、腕っ節の強い美青年がやってきた。彼はしかもプレイボーイ。徴兵屋の娘に「あなたはフランス軍に入って王女と結婚する」と予言されて軍に入り、さまざまな場面で強さを発揮しながら王女の夫の座に近づいてい…

フェデリコ・フェリーニ監督「道」110

1954年のイタリア映画。ちょっと足りない女、ジェルソミーナ。彼女を引きまわす旅芸人の荒くれ者ザンパノ。荒くれ者なので、愛を知らない。何でも茶化す綱渡りの青年に腹を立ててしまい・・・ザンパノは1人になってしまい、ジェルソミーナを思って泣く・・・…

斎藤寅次郎監督「東京キッド」109

1950年作品。美空ひばりが13歳のときに出演して、タイトル曲を歌ったことで知られている映画です。 天才少女と騒がれた!って聞いてたので、どんなコマッシャクれて天才肌の子どもかと思って見たら、賢くて可愛げのある女の子って感じでした。歌もあじわい深…

松田秀知監督「交渉人 The Movie 高度10,000mの頭脳」108

2010年作品。TVの「交渉人」は見たことないんだけど、これが年末2時間ドラマだったら十分楽しんで見られると思う。敏腕警察官が2人乗っている飛行機で、犯人が特定できているのにみすみすハイジャックを始めさせてしまうという醜態が最初から都合がいいんだ…

李相日監督「悪人」107

2011年作品。いい映画だった! 文句なしのイケメン妻夫木聡が、汚い金髪、もっさりとしたジャンパーと太いズボンのイケてない九州の海辺の町の若者にしか見えない。美人女優深津絵里が、孤独なOLにしか見えない。決して大げさでなく、これは自分と同じような…

アルフレッド・ヒッチコック監督「バルカン超特急」106

1938年作品。 http://0eiga.com/ いま、Ustreamで金曜〜土曜の夜中の0時から、著作権切れの名画を流すという「午前0時の映画祭」というのをやってます。なかなか夜更かしできず寝てしまって、今日初めて最後まで見ました。スリルとサスペンスで、興奮気味に…

伊藤大輔監督「王将」105

1948年作品。かの有名な将棋の天才、坂田三吉を描いた「王将」。夫婦善哉などと同様、大阪を知る上でmust!と思って見ました。坂田三吉ってのは、私のイメージでは藤山寛美みたいな人がやるもんかと思ってたら、かの二枚目俳優バンツマこと阪東妻三郎がやっ…

大島渚監督「日本春歌考」104

1967年作品。続けてこの2本を借りるのがちょっと恥ずかしかった、そんなタイトルの映画です。 鈴木清順で度肝を抜かれたので、じゃあ大島渚はどうなんだ?ということで借りてみました。変な映画だった・・・。大学受験中の悶々とした男子学生たちに荒木一郎…

藤田敏八監督「八月の濡れた砂」103

1971年作品。「ツィゴイネルワイゼン」で助演男優賞を受賞した藤田敏八が、あまりに良かったので、彼の監督作品を見てみました。後に清く正しい熱血教師を演じた村野武範が、女子を強姦しまくる無軌道な若者を演じてます。41年前の日本は、ノーヘルメットで…

キャロル・リード監督「第三の男」102

1949年作品。「市民ケーン」は1941年作品で、迫りくる戦争を思わせる不穏な空気が感じられましたが、こっちは戦後です。どこか前向きなカラっとした空気のある映画です。 闇取引とか、きらびやかな劇場とか、戦後のどさくさの荒っぽい熱気を感じさせます。 …

鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」 101

1980年公開作品。この監督の映画、初めて見ました。 率直にいうと、変な映画でびっくりしました。ケン・ラッセル「白蛇伝説」を思い出しました。けれん味の大御所って感じです。主人公を演じる原田芳雄、その友人を演じる藤田敏八、芸者と貞淑な妻の二役を演…

オーソン・ウェルズ監督「市民ケーン」100

記念すべき100本目は、名高い名作。 1941年公開という旧作ですが、隙のない構成、台本、画面構成等で、技術の未成熟による完成度の低さがまったくありません。だいいち、弱冠30代のはずのオーソン・ウェルズをはじめとした役者さんたちの、老年期のメイクや…

益子昌一監督「さまよう刃」99

2009年作品。東野圭吾作品なので、見た後に胃がムカムカして人間ってホント黒い!って嫌になるようなものを期待(?)してたんだけど、テレビの2時間ドラマくらいの重さしか感じなかったのが意外です。最後の最期にxxとかxxとかが実は黒幕で、みんな踊ら…

山田洋次監督「おとうと」98

2010年作品。夫を早く亡くしたあと、女手一つで娘(蒼井優)を育て上げた薬剤師に、吉永小百合。酒癖が悪く定職につけない弟に、笑福亭鶴瓶。寅さんシリーズ的な展開をみせるストーリーですが、蒼井優の結婚式をぶちこわしにして姿を消した後、彼はがんが全…

ジェームズ・アイヴォリー監督「日の名残り」96

1993年作品。原作はカズオ・イシグロ、長崎で生まれて5歳でイギリスに渡り、この作品でイギリス最高の文学賞「ブッカー賞」を受賞した。現在57歳の現役作家で、この作品は1930年代〜50年代の大戦前後を描いたものだけど、まるで19世紀の作品のようです。イギ…

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督「恐怖の報酬」97

1953年のフランス映画。仏領ベネズエラで一旗揚げようと渡って来たのはいいが、仕事がなく飢え死にするものが続出している。破格の給料でニトログリセリンを積んだトラックの運転手の募集がかかり、数人の男が応募した。途中は悪路の連続で、目的地に到着し…

福田晴一監督「二等兵物語 女と兵隊・蚤と兵隊」95

1955年作品。これもBSで見ました。伴淳三郎が若い。花菱アチャコは私がものごころついたときにはもうあの世の人だったので、なんか伝説の人を見てる感じです。人のよさそうな大男、って印象です。先日見たばかりの渥美清が出てる「拝啓天皇陛下様」と同様に…

ジョン・シュレシンジャー監督「遥か群衆を離れて」94

1967年作品。2時間50分の大作!!Thomas Hardyがこの映画の原作「Far from the madding crowd」を書いたのは1874年。19世紀の酪農家や軍人の世界が舞台なので、これが古い映画なのかなんなのか、見ててよくわかりません。。が、やっぱり画面の色合いとかヒロ…

今村昌平監督「楢山節考」93

1983年作品。ずーっと前からTSUTAYAで予約してて、やっと届きました。 上映当時、坂本スミ子が役作りのために前歯を削ったって話を聞いたのを覚えてるけど、姥捨て山の話だって聞いてたので、とてもじゃないけど見る気がしませんでした。当時の私は受験生だ…

野村芳太郎監督「拝啓天皇陛下様」92

1963年作品。見る前は、コミカルに描いているとはいえ「私は貝になりたい」みたいな映画だと思ってました。「私は貝になりたい」は、1994年に所ジョージが主役を演じたものを見ましたが、いつもお気楽な感じのお笑いをやっている所ジョージのシリアスな演技…

フィルダー・クック監督「テキサスの五人の仲間」91

今日の一言:「誰と誰が五人の仲間なんだ?」 (原題は「A Big Hand for the Little Lady」なんですけどね)1965年作品。「十二人の怒れる男(1957年、アメリカ)」を思い出しました。ほとんど密室の中で、その場にいる人物の濃厚なやりとりだけを映画にした…

園子温監督「愛のむきだし」90

2009年作品。 これも満島ひかりもの。 あまりにもアングラで異形の世界なので見てる間ずっと心配だったけど、最後なにか感動を催してしまいました。アングラ…私が昔なぜか好きだった「マリア観音」っていうアングラバンドとよく対バンしてた「ゆらゆら帝国」…

石井裕也監督「川の底からこんにちは」 89

2010年作品。 満島ひかりって女優に興味をもったので、主演作をいくつか見てみることにしました。東京で働くハンパなOL佐和子が、父が病気になって実家のしじみ工場を継ぐことになって帰ってくる。つきあっていたバツイチ子持ちの上司も付いてくる。といって…

新藤兼人監督「母」88

1963年作品。 そういえばこれまだ見てなかった、と思って。前置きを読むと、息子の病気の治療のためにうんと年上の男と再婚する母の計算高さ…のような映画だと思ったけど、映画のなかの母=乙羽信子は欲目を感じさせない愛情豊かな母です。タイちゃん…殿山泰…