映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

成瀬巳喜男監督「娘・妻・母」3249本目

1960年の作品。ジャケットは高峰秀子だけど、淡路恵子も原節子も草笛光子も中北千枝子も杉村春子も三益愛子も出てる。森雅之と宝田明も。原節子と高峰秀子と草笛光子が姉妹。中北千枝子がセールスして回ってるのは、77万円を信託すると6年5か月で100万になる…

チャック・ベイル 監督「激走!5000キロ」3248本目

ニューヨークからロサンゼルスまで、5000キロをただ走って先に到着したものが勝ち。景品はトロフィー、じゃなくて、似た形の「ガムボールマシン」。背景や前提の説明は何もなく、ただ走り屋どもが集まってきてスタートします。すがすがしい。 走り自体は「激…

ヴィム・ヴェンダース監督「ゴールキーパーの不安」3247本目

ヴェンダース監督の長編第一作らしい。流してみてると流れてしまうけど、よく見ると変な映画だ。 ゴールキーパーは審判にいちゃもんをつけすぎてレッドカード退場、スタジアムが交通不便な場所にあったので地元のホテルに泊まって、映画館に行ったり、その辺…

パトリック・ブシテー監督「つめたく冷えた月」3246本目

1991年のフランス映画だけど白黒。フランスといってもカトリーヌ・ドヌーヴが出るような美しい謎めいた映画ではなく、イザベル・ユペールが出るような皮肉キツイ映画でも、ジェラール・ドパルデューが出るような活劇でもない。…ちょい汚めで屈託のないおっさ…

ドン・チャフィ監督「アルゴ探検隊の冒険」3245本目

タイトルとジャケットのビジュアルから、現代ものだとばかり思ってたら、まさかのギリシャ神話ものだった。ふーん、と見てたら、なんと大魔神が登場するじゃないですか。ブロンズ製かしら。しゃべる「船の舳先にいるあの女性」。大映か円谷プロか?なんだか…

アミール・ナデリ監督「CUT」3244本目

すごく絞った一つのテーマで作った作品だ。つまり、価値のある、娯楽でない映画を作り続けるためにどこまで犠牲を払いつづけるか。答は「命のあるかぎりどこまでも」。 といっても、兄がもう死んでんのに保険金かけてなかったのか、まだ弟から全額取るとかお…

クロード・シャブロル 監督「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」3243本目

<ネタバレあり> ペール先生42歳のときの作品。まだコワイ女が定着してない頃じゃないかな。(私は常にコワイ彼女を期待しすぎてるので、実は純な女性という役も見たくなってきた) 奥様はジャクリーン・ビセットか。若い家政婦はサンドリーヌ・ボネール。…

ダニス・タノヴィッチ監督「ノー・マンズ・ランド」 3242本目

ここしばらく、U-NEXTを離れて、TSUTAYA宅配レンタルの「見たい」リストに入れっぱなしだったものを大量に借りたのを見てます。(今朝から家のネットに障害が出てるので、ちょうどよかった)U-NEXTにもAmazonプライムにも入っていなくて、宅配レンタルでもす…

エルマンノ・オルミ/アッバス・キアロスタミ/ケン・ローチ監督「明日へのチケット」3241本目

群像劇なのかな。 急なフライトの欠航で列車にチケットを振り替えてくれた秘書に、ラブレターのような手紙を書いては消している、老齢の博士。 なにか事情があって、わがままな老婦人の世話をしながら乗っている若者。彼女は去年亡くなった将軍の妻で、若者…

ファティ・アキン 監督「そして、私たちは愛に帰る」3240本目

<ネタバレあります> トルコの現地の人たちの暮らしが垣間見られて面白い。たとえば、男も女も、白い酒を飲んでる。水を入れると白濁する、ウゾみたいな強い蒸留酒に違いない。 老人と息子、老人が惚れた娼婦の3人。彼らはドイツに住むトルコ人。息子は大学…

今村昌平監督「果しなき欲望」3239本目

今村昌平のごく初期の作品。 冒頭、1958年の地方都市の、まだ戦後の雰囲気が残る駅前。集まってきたのは星形のバッヂを胸に付けた悪そうなやつら。新卒サラリーマンみたいな若造は小沢一郎だ。一番悪役ヅラしてるのは西村晃(若い頃のミシェル・ピコリと重な…

マイク・ホッジス 監督「フラッシュ・ゴードン」3238本目

NHKBSでクイーン特集をやった流れでこれも放送したので、初めて見てみた。 フラッシュ君はクリストファー・リーヴのスーパーマンに似てるな、と思って時代を画印したらスーパーマンの映画が1978年。なるほどの二番煎じ感。(失礼!) そもそも何でアメコミの…

イ・チャンドン 監督「シークレットサンシャイン」3237本目

ペパーミントキャンディーの世界だ。絶望(比喩じゃないやつ)のあとのインスタント解脱、そこからやっと壊れ始める人格。安易な救いなんてどんな宗教でもないのだ。 自分を傷つけたアイツはきっと今頃、宗教に救いを見つけたり、家族と笑いあってアイスでも…

是枝裕和監督「花よりもなほ」3236本目

わかりにくかった…。 是枝監督の作品は一通り見てみよう、と思って見てみたけど、のんびりとしてコミカルな長屋の人たちの雰囲気に飲まれて、仇討ちとか切腹とかが”場面のひとつ”としてするする流れていってしまった。 珍しく時代劇だけど、長屋のひとびとの…

ロバート・タウン監督「テキーラ・サンライズ」3235本目

小じゃれたトロピカル・カクテル片手に浜辺で、トサカを高く立てた女子とごっつい野郎どもがからむようなタイトル(原題同じ)。まるで1980年代の日本のトレンディ・ドラマみたいな世界だ。メル・ギブソン若い。ミシェル・ファイファーすごくきれい。カート…

ポール・マザースキー 監督「グリニッチ・ビレッジの青春」3234本目

最初は「ふーん」という感じだったけど、ちょっと忙しかったので流してみながら作業をしてるうちに、好きになってしまった、この映画。友達と同じで、長い間一緒にいるだけで、だんだん親しくなっていくような。ジャンルとしてはもう作りつくされているかも…

ジョセフ・ロージー 監督「唇からナイフ」3233本目

お洒落に決まってるタイトルとジャケットイメージ。冒頭の音楽も、アイドルとポップスの中間みたい。 原題のモデスティ・ブレイズはモニカ・ヴィッティ演じるセクシーな泥棒の名前。いいなぁこの人。何物にも動かされず好きなことだけやってるような、この雰…

坂東玉三郎監督「外科室」3232本目

これもずっと見てみたかった。最近映画はVODでばかり見てるけど、久々にTSUTAYAの宅配レンタルでまとめて借りた中の1つ。 ストーリーは知った上で見る。画面は一貫して美しく夢みるような感じ。ただ、寝て見た夢みたいに、ぼんやりとした気持ちになってしま…

ケン・ローチ監督「ジミー、野を駆ける伝説」3231本目

「ジミーのホール」がどうして「野を駆ける伝説」になるんだろう。ちょっと映画の雰囲気と違っていて、むしろ日本人がアイルランドに求めるイメージにおもねたようなタイトルじゃないか?いいけど。 カトリックがいろいろ厳しいということは見聞きしてるけど…

ロバート・シオドマク監督「幻の女」3230本目

Amazonプライムに勧められて見てみる。アリバイを証言してくれるはずの、名も知らない女…。なかなかスリリングな紹介文に好奇心をそそられます。 ガラガラの酒場ではカウンターで2人で飲んでいたのに、バーテンダーは一人だったという。二人で乗ったタクシー…

原一男監督「全身小説家」3229本目

瀬戸内寂聴さんの訃報を受けて、彼女の主だった作品を読んでいたら、井上光晴とのロマンスとそれに続く出家という話があちこちで語られていて、この人のことも見てみなければと思った次第。 監督が原一男だからか、赤裸々に本人の日常をさらけ出してますよね…

山田大樹監督「湘南爆走族」3228本目

これもまた、今誰が見るんだろうという作品。同年代の人と話してたらこの映画の話が出て、今さらもいいとこだけど見てみようと思いました。 確かに出てるわ、江口洋介と織田裕二。手芸部の部長は清水美沙か。カン高い声は確かに彼女のものだけど、ふっくらし…

行定勲監督「ピンクとグレー」3227本目

これと原作者が同じ「オルタネート」を読んだばかり。仕掛けを作る志向の人なのかな。「オルタネート」ではSNSを介して盛り上がるゲイのカップルや、お料理コンテスト、AIによる遺伝子マッチングなどを盛り込んでた。この作品では、幼なじみのトップスターの…

パウロ・モレッリ 監督「シティ・オブ・メン」3226本目

すごくよく出来てた「シティ・オブ・ゴッド」の続編ということで見てみた。 全然感触が違う。こっちの画面のほうが慣れてる…日常を撮った感じがする。「ゴッド」はおもちゃみたいな公営住宅が舞台だったけど、今度は山腹に沿って建つ違法建築のスラムが舞台…

フェルナンド・メイレレス 監督「シティ・オブ・ゴッド」3225本目

すごく面白かった。悲惨な恵まれない子どもたちの映画…とは描かれてない。スラムの子どもギャングたちがどんな風に世代交代して、どんな風に凶悪化していったかを語るのは、カメラの後ろという傍観者の地位を手に入れたことで生き延びて、抜け出すことができ…

ベネディクト・エルリングソン 監督「たちあがる女」3225本目

アイスランドが気になって、映画を見つけたら必ず見るようにしています。氷で覆われた真っ黒い溶岩でできた最果ての島。金髪碧眼の美しい人たちが、映画の中では割と突飛でどこかマヌケで、いい奴かと思ったらなかなかの問題人物だったりして、まったく掴め…

キム・ドヨン 監督「82年生まれ、キム・ジヨン」3224本目

1982年生まれということは、現時点で39歳。原作が書かれたのは数年前としても30代後半、し烈な学歴社会のなかで塾にも通い、がんばって進学して就職して、結婚して出産してまだ子どもが小さい、という女性像は日本でも共感する人が多そう。この作品の前に見…

キム・チョヒ監督「チャンシルさんには福が多いね」3223本目

韓国では働く独身女性がたらいで洗濯したり、大家さんちで肉をごちそうになったりしてるのか。(※一例だけ見て一般化は禁物)昔の学生向けの下宿みたい。家族と一緒みたいでちょっといいな。私こういう、普通の人たちの映画って好き。 女らしさを武器にしな…

篠原哲雄 監督「犬部!」3222本目

面白かったけど、時系列が行ったり来たりする一方で、出演者たちの見た目が同じままなので、画面テロップの「200x年」をよく見ていないと混乱する。ワンコの成長で時系列をチェックすればよかったと、あとで気づく。 原作がノンフィクションで、同時期に別の…

ミシェル・ゴンドリー監督「エターナル・サンシャイン」3221本目

これ見るの何回目だろう。DVDまで持ってる。 暗いジム・キャリーとチャラいケイト・ウィンスレットという意外な組み合わせ、なぜか端役のキルスティン・ダンスト、イライジャ・ウッド、マーク・ラファロの重要性があとになってわかってくる面白さ。ミシェル…