映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2014-01-01から1年間の記事一覧

スパイク・ジョーンズ監督「her 世界でひとつの彼女」810本目

とても面白かったし、意外な成り行きに目を逸らせなかったし、結末にもしんみりとした。 ありきたりのSFのようなテーマかと思ったら…というか、そういう先入観をもって見た人のほうが強い印象を受けたんじゃないだろうか?ホアキン・フェニックスってこんな…

ジャン・リュック・ゴダール 監督「気狂いピエロ」808本目

この映画は、20代のときにレンタルして見たことがある。 高校の近くに「気狂いピエロ」って喫茶店があって、喫茶店って禁止されてたので入ったことはないんだけど、どうやらそういう名前の映画があるらしいと知って、喫茶店への興味から見てみたのでした。…

瀬々敬久 「アントキノイノチ」809本目

暗闇の深さって本当にこのくらいなんだろうか。 原作なのか、映画のつくりなのかわからないけど、友達を死なせてしまったり、リストカットを重ねたりした子たちが、本当の光を見つけるのって、時間もプロセスも、もっと複雑なんじゃないか、一進一退なんじゃ…

マイケル・ウォドリー 監督「ディレクターズカット ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間」807本目

あのウッドストックのディレクターズカット。中古CDショップで見かけたので迷わず買いました。 ジミヘンにジャニスにスライにサンタナ、若くてエネルギーが体の中からほとばしり出ている彼らの演奏。 屋外の陽光の中だからか、見ている私も自然と巻き込まれ…

佐々木昭一郎監督「四季・ユートピアノ」806本目

そろそろこの人の作品を見慣れてきたかな、と思いながら見てもなお難解で、なお美しく、なおつかみどころがなく、不思議でかつなぜか快適だ。 菩薩みたいに世の無常を受け止めて微笑んでる、この女性のせいなんだろうか?この作品はかつてVHSで発売されたん…

タナダユキ監督「ふがいない僕は空を見た」805本目

思いのほか強烈な映画だったな。 強烈といってもショッキングな場面はひとつもない。コミケでたまたま出会った、わりと普通の人たちが、何かのスキマにつるっと落ち込んでしまう。 コンビニの先輩がとがめられて出て行けと言われる場面とか、「僕」が自分の…

佐々木昭一郎監督「川の流れはバイオリンの音」804本目

「夢の島少女」から7年後、やわらかく美しく成長した中根幸世が、イタリアのさまざまな土地をおずおずと訪ねます。ロードムービー、とも言えるのかな、この監督の作品は。目力が弱まってはいないけど、ずいぶんやさしい、微笑むばかりの子供のような女性に…

佐々木昭一郎監督「マザー」803本目

いくつか見たなかでも、特につかみどころがない感じがしました。 でも、主要な登場者たちの佇まいの魅力は、この映画でも強く感じられます。なんというか…遠くにいる人にはわからないけれど、母のいない子はうすっぺらいかわいそうな子供、というものではな…

ウェス・アンダーソン監督「グランド・ブダペスト・ホテル」802本目

映画館に行った時のほうが、どの映画を見ても、先が読める気がしてしまうのはなぜだろう?前のめりしすぎてしまうのかな。この映画は、CGも実写も、美しい機械(たとえば機械式腕時計)のように美しく、ストーリーはユーモラスかつミステリアス、最後まで飽…

ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 監督「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」801本目

面白い。確かに、普通に流れていく時間が微妙〜に可笑しい、コーエン兄弟の世界。なんだけど、つい先を読みすぎてしまってフルには楽しめなかったかな。猫の顛末とか…ジーンの枕営業とか…。”宇宙に行きたくないよ、ケネディ”の歌も、いかにもだなぁとか思っ…

佐々木昭一郎監督「夢の島少女」800本目

1974年作品。 これもまた強烈な作品でした。 中尾幸世という少女が演じるのは、ど田舎の美少女。というと身も蓋もないけど どうということもない少女だった私としては、クラスに一人くらいいる、要望も雰囲気も美しい少女に憧れたし羨んだものだけど、彼女た…

佐々木昭一郎監督「さすらい」799本目

1971年の、NHKのドラマ。 この監督はNHKの職員だった人だけど、独特のユニークなドラマを作り続けた人で、その作品はのちの日本の映画監督の数々に影響を与えたそうな。 河瀬直美の映画の作り方とか、この通りだと思った。 監督は映画を構想し、脚本を用意す…

ジャック・ペラン 監督「オーシャンズ」798本目

すごい映像でした。海を舞台にして、あっちの生き物たちに演技指導をしたかのようなダイナミックで生き生きとした映像。カメラの位置決めをしてからイワシの群れを呼び寄せる…なんてことできるわけないか?製作者がどんな説教くさいことを意図しようと、関係…

山田洋次監督「小さいおうち」797本目

タキさんという素朴な女性の美しい心を通しているから、戦争も色恋もキレイなんだな。 ミステリーというには、はなからネタバレだし、いろいろなところが妙におとぎ話めいてリアリティがないんだけど、それはむしろ狙ったものなのかな、と思いました。 タキ…

ジョエル・コーエン監督「バートン・フィンク」796本目

これがパルムドールか! ヨーロッパの専門家たちが深読みしすぎて、本来の意図よりめいめいの思いを投影してしまったんじゃないのか?なにか、薄暗い、いやーな気持ちが蔓延した映画でした。テーマは、アラ50なら江口寿史の”ワニが…赤いワニが…”で通じる、…

アンソニー・ミンゲラ 監督「イングリッシュ・ペイシェント」795本目

複雑な構成なんだけど、けっきょく中心にあるのは、夫とラブラブと思われた妻を寝とったせいで、夫のほうも、妻のほうも死なせてしまって、生きる屍のようになってしまった男、ということなんですね? 舞台が砂漠の戦場だとこの映画、サーカスだとシャガール…

デイヴィッド・リンチ監督「エレファントマン」794本目

これも昔から知ってたけど見てなかった映画。わくわく。 デイヴィッド・リンチ作品は「ブルーベルベット」は公開後わりとすぐに見たし、「マルホランドドライブ」は最近急に映画をたくさん見るようになったきっかけになったほどハマった。 この映画は、監督…

マイク・ニコルズ 監督「卒業」793本目

子供の頃から、40年以上も前から知っていたのに初めて見る映画。わくわく。 1967年の映画にしては現代的。70年代映画の雰囲気だなぁ。 このとき30歳のダスティン・ホフマンが20歳のスター学生ベンジャミンを演じています。今だったらマーク・ザッカー…

スティーヴン・ダルドリー 監督「めぐり会う時間たち」792本目

監督の名前聞いたことあるなと思ったら、「リトル・ダンサー」と「愛を読む人」、「ものすごくうるさく、ありえないほど近い」か。人の痛みを痛いまま描く監督だ。美しいまま描く監督だ。この映画は、すうっと入ってきて私の胸も苦しくなった。人が自分で死…

ジョン・カーニー 監督「ONCE ダブリンの街角で」791本目

「低予算だけどいい映画」「とにかく音楽がいい」とどこを見ても書いてある。実際見てみたら、それ以外の形容のしかたが思いつかない。 その辺のストリートにいそうな歌うたいの青年と、その辺で雑誌を売っていそうな移民の女性。そのリアリティがとてもよく…

ウォルター・サレス 監督「オン・ザ・ロード」790本目

このところ、ひとりビートニクスブームで、この映画の原作、ジャック・ケルアック「オンザロード」を読んだので、映像も見てみようと思いました。小説のほうは、若造(といっても戦争帰りなので若干タフな感じ)がアメリカ国内をふらふら旅しては酒や薬や女…

ワリス・フセイン 監督「小さな恋のメロディ」789本目

かの有名な作品。マーク・レスター、トレイシー・ハイド、ジャック・ワイルド、この3人がとてつもなく魅力的でした。子供時代の曇りのない心、果てしなく広がる夢、なんてものに想いを馳せました。単なる美少年美少女というより、思っていたより3人3様で…

ジョシュア・ローガン 監督「バス停留所」785本目

急に不自然になったと思ったら、アクターズスタジオに通ってたんですって。余計なことをしてしまったようです。娯楽映画としては楽しめるけど、彼女のイノセントな魅力がそういうことで半減している気がするので、点はちょっと辛め。脳みそ筋肉なかんじもカ…

ニキ・カーロ 監督「クジラの島の少女」784本目

先月行ってきたニュージーランドの、マオリ族を取り上げたファンタジー。 クジラに乗ってニュージーランドに渡ってきたと言われる一族の、伝統に厳格な父とそれに反発して外国へ行ってしまった息子、島に残った孫娘。代々男子だけが伝統を受け継ぐことになっ…

テリー・ジョーンズ監督「モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン」788本目

思いのほか、完成度の高い作品でした。 つまり、起承転結を含む構成がかっちりしている。美術(衣装、セット)が大変凝っている。 パロディの質が高く、かつ誰が見てもバカバカしくて大笑いできる。 メインの登場人物のほとんどをたった6人で演じ分けている…

ジョエル・コーエン 監督「ビッグ・リボウスキ」787本目

先日初めてファーゴを見てから、コーエン兄弟ヤバいと思ってこの映画も見てみたのですが、おかしなキャラクターが出てくる出てくる、期待をさらに超える大笑いでした。笑えるだけじゃなく、実に生きてる。登場人物が生きてる連続ドラマみたい、という意味で…

ロマン・ポランスキー監督「フランティック」786本目

ポランスキーがハリソンフォードを主役にした映画かぁ。 クライムサスペンスとしては、チャイナタウンの方がずっと上と思えるので、チャイナタウンの10年以上あとでこの作品というのは、ちょっと物足りないです。ハリソンフォードとの相性もあるのかな?出張…

ジャック・スマイト監督「動く標的」783本目

ポールニューマンが爽やかで気ままで、素敵。ストーリーは、わりとスリリングではあるけど、ローレンバコールの役どころにヒネリがなくて出番も少ないし(弁護士とできてんのかなと思ったのにそういうわけでもない)、失踪した富豪は一度もちゃんと登場しな…

サントーシュ・シヴァン 監督「秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男」781本目

バスコダガマは、偉人なんかじゃないやい!奴らは僕らの国を踏み荒らしたのだ!…という映画。 インド映画ってどれを見ても、すごく“楽しさ”レベルが高い。美しい女性、強い男性、コミカルでリズミカルなダンス、わかりやすい悪者、けなげな子ども…。見る人に…

宮崎駿監督「風立ちぬ」780本目

これほど合わないとは…主人公の声と顔。 理系だから棒読み?いや、顔と声がそもそも合わないし、顔の表情が豊かなのに声が一本調子ってのがちぐはぐだし…アニメの人たちって、本物の理系の研究者という人にほとんど会ったことがないんじゃないかな?下手は下…