映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2023-01-01から1年間の記事一覧

S.S.ラージャマウリ 監督「RRR」3661本目

なんて暑苦しくてエネルギッシュな映画でしょう。画面からあふれ出て押し寄せるカロリーがすごくて、見てるだけでインド人になってしまいそう。 今までに見た数少ないインド映画には、家族の愛情や、身分違いの恋や、宗教対立を果敢に描いてきたものなどがあ…

なるせゆうせい監督「縁の下のイミグレ」3660本目

見る前は、尺が76分と短いので、こじんまりと終わっちゃうのかな?とか、シリアスすぎたら楽しめないかな?などと心配しましたが、なかなか濃くて面白い「シチュエーション・コメディ」でした。 ベトナムから来た技能実習生がトラブルに見舞われ、彼女を守り…

沖田修一監督「さかなのこ」3659本目

2回め。優しい映画だな、やっぱり。みんなこんなに優しかったらいいのにね。 そして、ほんとリアリティじゃなくてファンタジーに8割くらい傾いた作品だったなと思う。人の優しい部分をどんどん引き出すさかなクンやミー坊は偉大だ。 自分がエキストラとして…

ジョン・ワッツ 監督「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」3658本目

「ホーム」シリーズ第二作。第一作はワザとローテクに作ってあったな、と改めて思う。こっちのほうが全体的にスピーディでエンタメ性が高い。 それに・・・ジェイク・ギレンホールは私の中では常にポイント高いんだよなぁ。彼が出てる映画はちょっと変ですご…

ジョン・ワッツ 監督「スパイダーマン:ホームカミング」3657本目

「ノー・ウェイ・ホーム」を先に見てしまったけど、さかのぼってこれも見ました。 トム・ホランド、ほんとに普通のアメリカの少年みたいね。テーマ曲が懐かしのラモーンズだなんて、ちょい懐かしめの学園ドラマっぽい。よくできてるけど、学園ドラマのつもり…

ジョン・ワッツ 監督「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」3656本目

見る順番をまた間違えた。スパイダーマンの「ホーム」シリーズの最新のだった。 トビー・マグワイアは見たかもしれないけど記憶がなくて、アンドリュー・ガーフィールドは見てない。おかげで前者はサイダーハウス・ルールとギャツビーの”傍観者”的イメージの…

ボブ・ペルシケッティ/ピーター・ラムジー/ロドニー・ロスマン監督「スパイダーマン:スパイダーバース」 3655本目

教え子がめちゃくちゃ最新作を推すので、まずこれから見てみることにしました。(本当は最新作が実写版だと勘違いして「ノー・ウェイ・ホーム」を見てしまったけど、そっちの感想はあとで) 「エブエブ」の感想で「最近流行りのマルチバース作品」と書いてる…

アキ・カウリスマキ監督「パラダイスの夕暮れ」3654本目

1986年、アキ・カウリスマキ監督の初期の作品。 まだ若いお姉ちゃんという感じのカティ・オウティネンは、今年になってから何度も仕事をクビになっている。ごみ収集業のマッティ・ペロンパーが彼女と出会ってナンパします。この方、「モーゼに会う」1994年の…

アキ・カウリスマキ監督「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」3653本目

U-NEXTに未見のアキ・カウリスマキ作品がいくつも入ってきたので、喜んで次々に見てみたいと思います。1994年作品。1989年の「ゴー・アメリカ」の二匹目のどじょうってやつですね。レニングラード・カウボーイズは「ハノイ・ロックス」と同様、関係ない地名…

佐藤祐市 監督「キサラギ」3652本目

阿津川辰巳の作品集「透明人間は密室に潜む」の中にアイドル関連の事件を裁判員たちが審判するという短編があって、その流れでこの作品の名前が目につきました。2007年の作品。文化的には大きく変わってない気がするけど、まだスマホじゃなくてケータイの時…

ルイス・ブニュエル監督「熱狂はエル・パオに達す」3651本目

これもDVDレンタル。 メキシコのブニュエル監督が撮ったフランス語作品か。主役がジェラール・フィリップだからだな。そういえば冒頭からのナレーションの声がジェラール・フィリップだ。 舞台の島はカリブ海のどこかのようだけど、OjedaやEl Paoという地名…

ロベルト・ロッセリーニ監督「無防備都市」3650本目

イタリアのネオリアリズモということは、「自転車泥棒」と同じジャンル? あれは孤独な父子の貧しい生活だけがぽつんと描かれた映画だったけど、これは熱く抵抗し、熱く戦った男たちと女たちと子どもたちの映画だった。救いのなさは似てる。 レジスタンスの…

エドワード・ヤン監督「ヤンヤン 夏の想い出」3649本目

やっと見ることができました。TSUTAYA DISCUSでDVDを借りるのは久しぶり。何年もこの作品を「見たいリスト」に入れてたけど、ずっと品薄で。最近はDVD借りる人が減ったので在庫があったのかな。 やんちゃな男の子の明るい物語・・・のわけないか、エドワード…

是枝裕和監督「怪物」3648本目

<結末についての考察やストーリーについて書いています> 迷いに迷って結局、新宿歌舞伎町にできたばかりの109シネマズプレミアム新宿で見てきました。YMO世代の私は坂本龍一の逝去がかなりショックで、彼の最後の映画音楽を、彼が音響をプロデュースした映…

タカハタ秀太 監督「鳩の撃退法」3647本目

公開すぐに劇場で見たけど、今度は家でVODで見ました。 佐藤正午は、今いちばん本当に面白い小説を書く作家だと思ってる(40年くらい前から)。日常から逸脱に逸脱を重ねて、どこまでも途方もなく遠くまで行ってしまうプロットを、推敲に推敲を重ねて仕上げ…

ナ・ホンジン監督「哭声/コクソン」3646本目

先に「女神の継承」を見てしまって、「コクソンの方が怖かった」と書いてる人が多かったので、どれほどおどろおどろしい作品なのかと思ったら、國村隼は見慣れていて少なくとも”異形”ではないし、村の駐在さんクァク・ドウォンが愛嬌たっぷりで(サモハンキ…

バンジョン・ピサンタナクーン 監督「女神の継承」3645本目

<結末に関する個人的な洞察が含まれています>(というほどのものではないけど) 本格的な作り込んだホラー映画(「ヘレディタリー継承」みたいな)かと思って、時間と心の余裕のあるときまで見るのを取っておきました。素朴な郊外の風景をそのままドキュメ…

ブライアン・デ・パルマ監督「ファントム・オブ・パラダイス」3644本目

また見てしまった。とうとうDVD買ったし。しかし画質良くないな、またアマプラかU-NEXTに入らないかな~。(Blu-Ray買えばよかった) また見たきっかけは、最近オペラとか見てる流れで劇団四季の「オペラ座の怪人」を見て、その原作も読んだらやっぱりこれを…

スティーヴン・スピルバーグ監督「フェイブルマンズ」3643本目

これもまた、見た後のあたたかい気持ちが、スピルバーグ。という作品でした。 ミシェル・ウィリアムズやっぱりうまい。悲痛な、身体の奥から湧いてきて止められない悲しみや渇望が、見ているものの胸にそのまま伝わってくる。これは、映画に夢中になった男が…

川口潤 監督「THE COLLECTORS さらば青春の新宿JAM」3642本目

新宿JAMの存在くらいは知ってたしコレクターズのライブもどこかで見た記憶のある元ロック娘の私でも、この映画の存在は知らなかった。これからこの映画を見る人はどれくらいいるんだろう。みんな見ればいいのになぁ。 JAMの場所は東新宿のほうなのか。全く行…

ロベール・ブレッソン監督「田舎司祭の日記」3641本目

<いろいろネタバレあります> 何やら陰鬱な表情の、若い田舎司祭が新しく村にやってくる。「ラルジャン」のロベール・ブレッソン、誰にでもある良い心と悪い心の葛藤や、悪運に巻き込まれて逃れられない運命を、あの映画でも描いてたように思います。 この…

オードレイ・ディヴァン監督「あのこと」3640本目

公式に医師の手に寄らず堕胎するって、最悪どういうことだろう・・・と想像したおそろしいことが一通りぜんぶ時系列的になぞられた映画でした。さすがアニー・エルノー、今たぶん世界一自分を客体として観察できる人。一切目を背けずに、”そのこと”を写し続…

中村高寛監督「ヨコハマメリー」3639本目

これは、胸に来るな・・・。戦後の混乱のなかを必死で生き抜いてきた人たち。世の中のモラルは、いつも後付けなのだ。一番大切なのは、生きること。それと、愛すること。その二つをまっとうした美しい生命たちの可憐な姿をいくつも見せてもらいました。 元次…

中江裕司 監督「土を喰らう十二ヵ月」3638本目

枯れた味わいのある、山菜や筍の土くささが漂ってくるような作品。河瀨直美の一連の作品や、「リトルフォレスト」や、NHKの「やまと尼寺 精進日記」など、山のものを料理するいろんな映像を思い出す。(お通夜の日にネクタイ締めて料理している沢田研二は、…

ポール・バーホーベン 監督「ブラックブック」3637本目

「トータル・リコール」「氷の微笑」、イザベル・ユペールの「エル」を監督した、あのバーホーベン監督の2006年の作品。全編ドイツ語です。この監督の作品は、人物のたたずまいがリアルで、よく知っている誰かを見ているような生々しさがあります。(たとえ…

石川慶 監督「ある男」3636本目

アイデアは既視感がある。でも安藤サクラ、窪田正孝、妻夫木聡をはじめとする役者さんたちの演技がよくて、ぐいぐいと見せてくれました。出自を偽りたい事情のある人はたぶんたくさんいて、それぞれに深くて暗い物語があるから、まだまだ映画はこのテーマを…

サイモン・アバウド 監督「マイ ビューティフル ガーデン」3635本目

これは那覇から戻ってくるANAの機内で見た。機内で映画を見る時代が戻ってきたのね、としみじみ・・・。那覇や石垣行きでもなければ、国内線でちゃんと映画一本見切れないもんね。 この作品はとにかく、ヒロインのベラを演じるジェシカ・ブラウン・フィンド…

三上智恵監督「沖縄スパイ戦史」3634本目

せっかくGWに沖縄で羽根を伸ばそうというときに、ついこういう作品を選んでしまう。やんばるの森で2泊する前の夜に、那覇で街歩きしたあと、ホテルの無料VODで見ました。本土のVODでこの作品を見かけたことはありません。今は世界遺産になった森を舞台に行わ…

トム・ジョージ監督「ウエスト・エンド殺人事件」3633本目<KINENOTE未登録>

立派な20世紀FOX映画だけど、日本で劇場公開されなかったのでKINENOTEには載ってません。(Netflix作品を1日でも公開すれば「映画」扱いだったりする、この扱いの不均一・・・。) 実は一度VODで課金したのに、ちゃんと見ないうちに期限切れにしてしまいまし…

イ・ジュンイク 監督「金子文子と朴烈(パクヨル)」3632本目

見るのが辛いかな、と心配しながら見たけど、金子文子を演じたチェ・ヒソとパクヨルを演じたイ・ジェフンがあまりにもチャーミングで、普遍的な物語として見ることができました。映画の冒頭に、パクヨルの「日本の民衆には親しみを感じている」というセリフ…