映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アメリカ映画(80年代まで)

ビリー・ワイルダー監督「お熱いのがお好き」2936本目

タイトルがいいですよね。Some like it hot、ホットを好む人もいる(コーヒーか?)、を「お熱いのがお好き」と変えるだけで、マリリン・モンローの色っぽい表情まで浮かんできます。実際は「86度のコーヒーを出したそうだな」っていうところから、熱いコー…

ジョナサン・デミ監督「ストップ・メイキング・センス」2945本目

VODは、前に見てその後も心に残ってた作品を、DVD借りるよりずっと気楽にもう一度見たりできるのがいいです。5年前にこの作品を見たとき、「賢そうでスカした奴ら」と思っていたトーキング・ヘッズをすっかり好きになってしまったので、もう一度見てみたかっ…

ジョン・ヒューストン監督「黄金」2942本目

<ネタバレあります> ボギーって都会派の探偵とかじゃなかったの?金鉱堀りもやるんだ。 しかも、悪役の中でも心のひねこびた欲深く疑い深い男です。山へ入る前は、給料未払いのボスを襲ったときも、払われるはずだった金額だけを抜いてあとは戻す、律儀な…

ハワード・ホークス監督「ヒズ・ガール・フライデー」2939本目

「フロント・ページ」が意外といまいちだったので、同じ原作の古いほうの映画を見なおしてみます。(原作は戯曲で、ヒルディは男) ヒルディを演じてるロザリンド・ラッセル、綺麗でカッコよくて素敵。その上司を演じてるケーリー・グラントと並ぶと、うっと…

ウィリアム・ワイラー監督「コレクター」2937本目

<ネタバレ、ありといえば、あり> テレンス・スタンプって最近「ねじれた家」や「プリシラ」を見たばかりだけど、前に見た若い頃の「遥か群衆を離れて」のプレイボーイの軍曹のイメージも強くて(美形で悪い男)、最初から彼のワルっぷりをちょっと期待して…

ビリー・ワイルダー監督「フロント・ページ」2936本目

この映画もう7年くらい探してました。U-Nextに入ってたのでやっと見ます。 「ヒズ・ガール・フライデー」はDVD買って持ってるんだけど、同じ原作だと?…チェックしてみたら、ほぼ同じストーリーだ。でもあっちはヒルディ役が美女だ!ハワード・ホークスが監…

ヘクトール・バベンコ 監督「蜘蛛女のキス」2927本目

8年前に見たけど、ぜひもう一度見たかった。 やっぱりラウル・ジュリアがいいんだよなー。ウィリアム・ハートもとてもいいけど。 最初は堅い表情のテロリストなんだけど、だんだん同室の”オカマ”の話に心を開き始める。笑ったり自分の話をするようになると…

デイヴィッド・リンチ監督「デューン 砂の惑星」2924本目

時代のせいか(1984年作品)、「ラビリンス(1986年)」と似た作り物っぽさをずっと記憶してるんだけど、全ツインピークスをはじめとするリンチ作品を見直しているのでこれもみなおしてみました。 当時は「スティングやっぱ美形だな」しか意識しなかったけど、カ…

ウディ・アレン監督「ブロードウェイと銃弾」2911本目

<ネタバレあります> けっこう前、27年も前の1994年の作品。ウディ・アレンがジョン・キューザックに憑依するのですが、舞台が”古き良き(悪き)禁酒法時代のアメリカ”なので、少し甘くほろ苦いロマンチックで、ロマンチック皆無の最近の作品と比べると、ウ…

マーヴィン・ルロイ監督「若草物語」2903本目

テレビ放送を見逃して、探してみたらU-Nextにあったので見てみました。 原題「Little Women」には、幼いけどもう大人の女性、という意味を込めて父親が呼んだものだけど、純粋でみずみずしい印象の「若草物語」という邦題にはそのニュアンスがありません。こ…

ジーン・ネグレスコ 監督「足ながおじさん」2899本目

これは見てなかったんだよな。 あしながおじさんというと、もはや日本では「あしなが育英会」が浮かぶんじゃないかと思うけど、私は原作がすごく頭に残ってる、ということは、多分家に本があったんじゃないかな。で、なぜ「足ながおじさん」にフレッド・アス…

フレッド・M・ウィルコックス 監督「禁断の惑星」2898本目

2013年に見てるけど、テレビでやってたのでもう一度見る。 禁断の惑星と聞くと、この映画ではなくて「Science fiction, baby--- forbidden planet-- oh oh oh--」っていうロッキー・ホラー・ショーの冒頭の歌しか浮かんでこないけど、前の感想にも書いたよう…

スパイク・リー監督「シーズ・ガッタ・ハヴ・イット」2886本目

1985年の作品。テキストが流れたあと、何の説明もなく黒人たちの普段の生活を撮った白黒写真が続く冒頭がスタイリッシュすぎる!英語をカタカナにしただけのタイトルが多くなったのは、この頃でしょうか。「ガッタ」とか「ハヴ」っていう音にリズム感がある…

コスタ=ガヴラス 監督「ミッシング」2880本目

チリで軍事クーデターが起きたときに現地にいて、その後姿を消したアメリカ人青年。これは彼と、彼を探し続けた妻と実父の実話を映画化した作品。失踪した青年(を演じたジョン・シェア)の風貌や質問好きなところが、前にNetflixで見た「カメラが捉えたキュ…

バーベット・シュローダー 監督「バーフライ」2878本目

映画「ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス」→自伝「パティ・スミス ジャスト・キッズ」→ドキュメンタリー映画「ブコウスキー オールド・パンク」→詩集「ブコウスキー 死をポケットに入れて」ときて、この映画を見てみることにしました。乱読、乱鑑賞は…

シドニー・サルコウ監督「地球最後の男」2871本目

1964年の作品。原作のタイトルは「吸血鬼」だそうですが、これはまごうことなきゾンビ映画だ。感染症だし。”敵”たちがこんなに弱いのは、数年前からすでに人間はほぼいなくなっていて、血を吸えないため弱り切ってるという設定なのか。(後で、感染すると目…

ブライアン・デ・パルマ監督「アンタッチャブル」2859本目

私の頭の中では、この映画(1987年)と「コットンクラブ(1985年、コッポラ監督)」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(1984年、セルジオ・レーネ監督)」がセットになってる。どれも禁酒法時代のニューヨークのギャング抗争がテーマ、というだけ…

マイケル・ウィナー監督「死海殺人事件」2830本目

ひとりアガサ・クリスティ特集、とびとびに継続中。定番のピーター・ユスチノフがポワロです。 死海ってヨルダンにあるんだよね?パレスチナの話ばかりしてるのは、死海はじつはイスラエルとヨルダンの国境にあるから…と思ってよく調べてみたら、このときイ…

ロバート・ワイズ監督「たたり」2829本目

なんだか濃い始まり方。被験者(アシスタントと博士は呼ぶけど、会ったこともないらしい)として選ばれたエレナは神経質でいつもちょっと怒ってる。「サイコ」で悪いことをした女性がさっそく被害者になったのを思い出していや~な予感がしてきます。もう一…

オーソン・ウェルズ監督「市民ケーン」2810本目

「マンク」を見たらこれも見たくなるでしょう。 まさかあんなに室内は暗くないだろうと思ってたら、記憶の数倍、暗かった。誰が誰だかわからない暗さ。まさに「マンク」ではそれを再現してたんですね。(しなくていいのに、見づらいから)これほど暗い画面は…

ルイス・サイラー 監督「男性都市」2789本目

原題「ピッツバーグ」が邦題「男性都市」。工業都市ピッツバーグは、主役の名前でもある。彼=町の名前、ということで「男性都市」になったのかな。無理やりっぽい~~ タイトルバックはドキュメンタリーみたいな工場の稼働風景。会社のお偉方たちが役員室で…

ルネ・クレール監督「そして誰もいなくなった」2788本目

<ネタバレあり> アガサ・クリスティの名作のひとつと数えられる原作を、出版(1933年)の12年後の1945年にアメリカで映画化したもの。クリスティはかなり読んだけど、書かれたのと近い時代の映像は初めてだし、「テン・リトル・インディアンズ」のメロディ…

プレストン・スタージェス監督「殺人幻想曲」2776本目

<ネタバレあり> これは原題も邦題もいいな。原題は「Unfaithfully Yours」、手紙に最後に書く「Faithfully Yours」をもじって、夫婦の間の不誠実(の疑い)を表してる。邦題は、指揮者の夫の妄想「殺人幻想」と「幻想曲」(というジャンルがちゃんとあるら…

ポール・モリセイ監督「処女の生血」2775本目

センセーショナルなタイトル。(原題は「ドラキュラ用の血」) アンディ・ウォーホールが監修したとか。どこを?若者のキャスティングに自分のお気に入りを推薦した?そのジョー・ダレッサンドロ、マッチョで涼し気な面持ちで男にも女にももてそうです。 と…

ジョン・ブアマン監督「未来惑星ザルドス」2769本目

タイトルからして「未来世紀ブラジル」や「不思議惑星キン・ザ・ザ」の仲間に違いない。冒頭から明らかに変な頭だけの神様のようなものが、ラピュタのように空に浮かんでいるし。その頭を被って裸みたいな恰好で戦う未来の人々。その中に立派な面持ちのショ…

ロマン・ポランスキー監督「吸血鬼」2740本目

タイトル素敵じゃないですか。MGMのライオンが途中からイラストの吸血鬼になって、その牙から垂れた血液が上へ流れていくタイトル文字にずっとポタポタと落ちていく。文字そのものも、ティム・バートンのアニメみたい(こっちのが古いけど)な手書き文字。ポ…

エドワード・セジウィック監督「キートンのカメラマン」2720本目

活動写真はあってもスチル写真のカメラをまだ一般の人は持ってない時代だったんだな。1928年は昭和3年。記念写真屋のキートンは、いっぱしの報道カメラマンを目指して事件を追いかけますが、まぁ喜劇なんで「これはないだろう」というような失敗続き。 ジム…

バスター・キートン監督「海底王キートン」2719本目

1924年は大正13年。あまりに昔で当時のアメリカの文化が想像できないけど、ノリが今と変わらなくて不思議。「全然笑えない」と感想を書いてる人も多いけど、古すぎてわからないというより、今はもう使い古されたってことかなと思います。すぐ女性が気絶する…

ラズロ・ベネデク 監督「セールスマンの死」2700本目

終身雇用ってものに縁がないアメリカのセールスマン。たいがいの人が、年を取れば商売のカンも鈍る。息子たちが一人前にならないうちは、それでも自分が真剣に稼がなければならない。妻の性格が良すぎて、そんな夫に明るくやさしい。 だんだん見ているうちに…

セルジオ・レオーネ監督「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」2696本目

<ネタバレあり> この映画は上映まもなく見たはず。ジェニファー・コネリーが大きくなったらエリザベス・マクガバンになるのが納得いかなかった。怖くて悲しい映画だったなという記憶はあるけど、デニーロだしギャングだからぜったいシチリアマフィアだと思…